暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
解かれる結び目 12
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言葉だけじゃ伝わらない熱を、貴方自身で感じ取るの。

 その中に、心を動かす何かがきっとある。
 それを見つけて、初めて気付けるのよ。
 貴方が、世界と、どんな風に関わりたいのか。
 どんな風に生きていきたいのか。

 それが、貴方が生まれた理由になる。
 それが、貴方の存在を形作るの。

「貴方の目に美しいと感じるものは無かった? 心地好いと感じる音は? 手当たり次第に壊して、その記憶に、心の中に、何か一つでも残ってる? 何も無いでしょう? 貴方が探してる答えは、その手で掴み取りたいもの、包みたいものだったのよ」
「何かを掴む為、包む為に、居た? 美しい もの?」

 闇に沈んだレゾネクトは、動こうとする気配もなく、ぽそっと呟いた。

「……触れてみたい、美しいもの……なら、ここにもあるな」
「?」
「貴様は美しい」
「……っ!?」

 真っ黒な闇の中、離れた場所に、透き通るような紫色の虹彩が浮かぶ。
 美しいと誉められたのに、全身で悪寒が走ったのは。
 それが決して好意から来る言葉ではないと理解しているからだ。

「薄い水色の女神マリア。その純白の翼を裂いたら、どうなるんだろう?」

 心臓が凍る。
 体が勝手に震えだす。

 純粋な興味。
 敵意も殺意も、悪意や害意すら無い、ただの好奇心を向けられることが、こんなにも恐怖を感じさせるだなんて、思ってもみなかった。
 今すぐ逃げなきゃ、殺され

「温かいな」

 …………なん、で?
 ()()()()()()()()()()のに。
 何故か私の背後に立っているレゾネクトの手が、私の左の翼を掴んだ。

「血が通っているのか?」

 レゾネクトの手が、翼に食い込んで、

「――――っうあ、ああ、あぁぁあああああああっっ!!」

 痛い。痛い、痛い、痛い痛い痛い!!
 心臓が背中から引き抜かれていくような。
 全身に細い針を大量に突き刺されているような。
 頭の中をぐちゃぐちゃに掻き回されているような。
 鈍くて鋭い痛みと恐怖が、私に悲鳴を上げさせる。
 涙が散った視界に、白い閃光が明滅する。

 翼が……、私の力が、無理矢理、引き千切られっ……!

「あぁあああ……っ!!」

 激痛に堪えられず床に転がった私の肩を、両手でうつ伏せに押さえ付け。
 馬乗りになったレゾネクトが、翼があった場所を興味深そうに見下ろす。

「血が出るわけではないのだな。そういうところは神々と同じ造りなのか。人間の器と大差ないように見えるんだが」
「!? っいやあああああ!!」

 傷口を確かめるように法衣を裂いた冷たい指先が、無遠慮に肌をなぞる。
 
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