第1章:平穏にさよなら
第4話「転機」
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〈はい。〉
それに対して緋雪は、蝙蝠の羽が張り付けられた赤い十字架のアクセサリーを掲げる。
聖奈さんの時と同じように女性の声が聞こえ、緋雪の場合は赤い光に包まれる。
光が晴れると、緋雪は白いカチューシャと胸元に赤いリボンを付け、所々を赤いラインやリボンで意匠を凝らした、白いフリル付きの黒いドレスを着た姿になっていた。
「嘘...デバイスをいつの間に...!?」
すぐさま歪んだ時計の長針・短針を繋げたような杖を持ち、そこから赤い魔力の大剣を形成する緋雪。
「...とにかく、無力化を...!」
デバイスを取り出した事に動揺するも、すぐに向き直る聖奈さん。
「お願い....逃げて....!」
「緋雪....。」
正気を失いそうな目で僕に懇願してくる緋雪。
「...志導君、アリサちゃんとすずかちゃんを連れて逃げて...!」
「聖奈さん....。」
聖奈さんも緋雪と同じように僕にそう言う。この戦いに巻き込みたくないのだろう。
「私だって、彼女を相手にいつまで持つか分からないの...。」
「えっ....?」
弱音のように呟かれた聖奈さんの言葉に、月村さんが反応する。
「今の緋雪ちゃんは、本能に振り回されて暴走しているんだろうけど...。...なんでかな、今の緋雪ちゃんを見てると、冷や汗が止まらないの....!」
...多分、緋雪が自分よりも圧倒的な強さを秘めていると、聖奈さんは感じ取ったのだろう。
...そうなると、ますます僕はこの場から退いた方がいい。だけど...。
「緋雪を置いてなんて....。」
「気持ちは分かるけど逃げて!」
「っ....!」
分かってる。確かに分かってるんだ。...だけど、大切で、もう失いたくない家族が、目の前で苦しんでるんだ。僕だって人間だ。理に適った行動を取ろうとしたくない時だってある。
「...ぁ....逃がサなイ...!」
〈封鎖領域、展開します。〉
「しまっ....!?」
もたついている間に、緋雪が何かを行い、この場にいる僕らが結界に閉じ込められた。
...それはいい。まだ、それは戸惑いこそすれど、慌てるような事じゃない。
...それよりも、僕は緋雪の...また、正気じゃなくなってしまいそうな顔を見てしまった。
「....三人共!できるだけここから離れて!」
「「は、はいっ!」」
結界に閉じ込められても、できるだけ避難させようと指示を出す聖奈さん。その言葉に、月村さんとバニングスさんは従うけど、僕は動かない。
「志導君!何やってるの!?」
「...っ、分かった。」
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