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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 2.
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管轄外だと尚も臍を曲げる。
「ったって、たかがバレンタインじゃないか。ZEXISの女の子達がどうにかするって」
「『たかが』? バレンタインを『たかが』ですって!? この大事な時に」
 矢庭に、射貫かんばかりの鋭い視線で琉菜がデュオを直視する。
「バレンタインを、もてない男に軽くあしらわれるのは面白くないわ! わかった、私も手伝う!」
 そこで、ぶっと吹き出した者がいる。感情的になった女の子を、それとわかる態度で笑うとは。不謹慎と言うべきか、命知らずというべきか。クロウとしては判断に迷う。
「すっげー体育会系発言! ちょっと勇ましすぎなくないか。だってバレンタインだろ?」
 遠慮のないエイジの態度に、琉菜の唇が富士山ならぬエベレストを形作った。
「じゃあ、あんたも手伝うのよ!」琉菜の人差し指が、上から弧を描いて軽口の犯人を指し示す。「勇ましくないバレンタイン、見せてもらおうじゃないの!」
「いっ!?」
 失言だったとエイジが悟った時には、もう遅い。
「よぉーし、これで手伝いのメンバーは決まりだな」
 残酷な程上手く締めるロックオンが、クロウ、デュオ、エイジ、そして琉菜を21世紀警備保障の手伝いに回す事を宣告する。
「がんばってね。何だかよくわからないけど」という葵の淡泊な声援が、単に成り行きの中で方針と手伝いのメンバーが決まった事を端的に表している、気がする。
 さりとて、今更反論が通る空気でもなさそうだ。21世紀警備保障の女性達との打ち合わせは、明日の朝。否応もなく、バレンタインの為に他でもないクロウ・ブルーストが、わざわざ時間を割いて最初の打ち合わせに参加する事になってしまった。
 緊張感漂う密会対応から2時間も経っていない中で。
 ZEXIS内の空気中をどうにかする為の祭り。その仕込み役として駆り出される側になる。奇しくもそれが度重なる混乱を間近で見届けるきっかけになるなど、この時クロウは想像する事ができなかった。


              − 3.に続く −

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