月下に咲く薔薇 2.
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なった時の恐ろしさを既に垣間見ている。あの日以来、ZEXISのオリジナル・メンバー全員がエルガン代表に対し強い不信感を抱いていた。
そこにきて、スメラギ達ソレスタルビーイングの中核であった量子演算システム・ヴェーダが、頼みとする頭脳の位置づけから滑り落ちつつある。今のZEXISは、幹の部分に大きな不安材料を複数抱える至極不安定な状態から脱する事ができずにいた。
それ故に、元々判断の基盤が崩れかけている時期だ。ドラゴンズハイヴ宛に届いた1通メールで、隊が大きく揺れるのはやむを得ない事態ではある。
ドラゴンズハイヴの田中司令は、発信主が「シンフォニー」と名乗っていると語った。そのシンフォニーなる人物は、あろう事か龍牙島がドラゴンズハイヴの本拠地である事を既に掴んでおり、ZEXISの編成にも通じていた。ZEUTHの名まで持ち出し時間と場所を指定する相手から「会いたい」と伝えられれば、こちらとしては相応しい人物を揃え出向きたくもなる。
その上、追伸には「重装備でお願いします」と狙いの読めない文章まで添えられていたという。自分とZEXISが接触する事で何かが起きる事を予見しているのか、或いは、ZEXISに攻撃される事をも辞さない覚悟を伝えているのか。もし前者であった場合を仮定すると、こちらが出し渋った時の後悔は決して小さくはない。
スメラギやゼロ、ジェフリー艦長は、ロジャー、アムロ達ZEUTHのリーダーと協議した末、ZEXISは可能な限りの機体とパイロットを揃え現地に出向くべき、との結論に達した。クロウとしては上の決定に異を唱える理由が見当たらないので、トレミーに搭乗し現地に向かう事を承諾している。
日付が変わる前の話だ。
三大国家連合軍の罠ではないかと疑う者もいたが、大半のパイロット達は「シンフォニー」と名乗る人物が現れると信じていたし、そうでないとしても罠なりの歓迎があるとの警戒心を抱いていた。誰も来なければ何も起きないという全くの無駄足を踏まされると想像できた者は、流石に一人もいない。
人革連の領内で、彼らに厄介者と疎まれている筈のZEXISが待ちぼうけを食わされ、暇を持て余した挙げ句に帰還する運びとなった。拍子抜けなこの事実に一番心を痛めているのはおそらくスメラギだろう、とクロウは考える。ソレスタルビーイングが絶対視していたヴェーダを、その役割から外した矢先の出来事だ。再発防止の決定打を欠いているだけに、戦術予報士として彼女の苦悩は長引くと誰でも想像する事ができる。
当然パイロット達の話題は、その件が中心になった。
「結局何だったのかしら」やや呆れ気味に、ソシエが右の手首を軽く返す。「思わせぶりな事を散々並べ立てておいて。質の悪い悪戯?」
「その可能性はかなり低いな」と、隼人がこちらの世界の事情通として否定する。「ZEX
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