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逆さの砂時計
解かれる結び目 11
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してない?
 『レゾネクト』は本名じゃないってこと?
 というより、今の言い回しだと、そもそも名前が無かった?
 それに、なんだろう? この違和感。

「それより貴様らが来るのを待ってたんだ。なあ、神々に選ばれた勇者達。教えてくれないか?」

 レゾネクトが腰を上げ、階段の一番上の段に座り直した。
 艶を放つ金髪と真っ黒な法衣が、赤い絨毯の上で無造作に広がり重なる。

「俺は何故、ここに居るんだ?」

「……………………は?」

 離れた暗い場所でも、不気味なほどくっきりと見える紫色の虹彩が。
 ごくわずかに傾いた。

 そうか。
 違和感の正体はこれだ。

 レゾネクトは、私達に敵意や殺意を向けてない。
 悪意や害意すら、欠片も持ってないんだ。
 あるのは『興味』。
 純粋な興味だけ。

「何故っ、て」
「あ、いや。この場所に居るのは、貴様らが来やすいように目印のつもりで選んだからだ。それはそうなんだが……だったら、どうして俺は、貴様らを待ってたんだ? ……ああ、そうだ。尋きたいことがあって、それで……、うん? 何故、貴様らに尋きたいと思ったんだ?」

 膝の上に肘を乗せて、手のひらに顎を乗せてみたり、頬を掻いてみたり。
 右を向いて、上を向いて、左を向いて。

 この男性、……何……?

「そうか。強いからだ。何百体、何千体もの悪魔を相手にしても、貴様らは死ななかった。神々が選んだ者だからか? それだけではないと思うが……あー……いや、待て。(さかのぼ)りすぎた。違う。遡る地点を間違えてる。今一番知りたいのは何だ? ああ……そうだ。俺は何故、この世界に居るんだ? 教えてくれ、勇者達」
「「「…………」」」

 警戒はしてる。臨戦態勢は崩してない。
 でも、動揺はしてる。
 私もコーネリアもウェルスも……

 ……アルフ?

「探しているのは、生まれた理由か? それとも生きる意味か?」

 アルフがまた、一歩前に出る。
 危険だわ。相手が何をしてくるか分からないのに!
 でも、レゾネクトは階段から一歩も動こうとしない。

「さあ……、どっちだろうな? 両方か。いや、生きる意味か? そうかも知れない。違うかも知れない。どっちでも同じな気もするが」
「そうか。分かった」

 アルフの腕が、レゾネクトに向かって、すぅーっと伸びる。
 何も持っていない手のひらを、上にして。

 後ろ姿だけど、伝わる。
 アルフは今、笑ってる。
 とても優しい微笑みを、レゾネクトに向けてる。

「来いよ、レゾネクト」

「アルフ!?」

 ダメだ。
 これ以上は動揺を隠せない。

 アルフは、出会った当初からずっと、対話の姿勢を貫いていた。
 自分
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