第5話
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翌日、教室に現れた結月は以前の明るさを取り戻していた。いや、明るさが倍増したと言った方が正しいだろう。クラスメートは結月の無邪気な笑顔に安堵の表情を浮かべ、何かの穴埋めをするかのように会話を競い合った。そんな彼らを笑顔で受け答えをする彼女の顔は、いつにもなく大人びていた。
* *
優大が足を踏み入れた体育館では、壮絶なバトルが繰り広げられていた。
月姫学園の体育館は創立時からあるA館と、東館と共に建設されたB館の二つに分かれている。学園の運動部の多くが男女で区別されているのと同じように、A館は男子の部活、B館は女子の部活と、使用する体育館も区別されていた。
B館はバスケットボールのコートを二面、バドミントンのコートを六面作ってもおつりが出るくらいの大きさなので、普段から二つのクラスが合同で使用していた。ただ、『懲役六年』のクラスと『禁固三年』のクラスが一緒になることは無かったのだが、今日は長雨のせいでグラウンドが使えないという特殊な理由であったため、高二―四組と高二―B組が体育館を使用していた。
部活をやっていればこそ交流はあるものの、『禁固三年』の生徒たちの三分の一は帰宅部であることから、両者に交流はほとんどなかった。ゆえに、全員が入り乱れてバドミントンをすることは無く、クラスごとに固まって授業を受けていた。
そのような状態をあまり良く思っていなかった『体育科の玉鋼』こと矢代は、両クラスのバドミントン部に目を付けた。
一人は、高二―四組の男子バドミントン部員にして副部長、杉山善人である。彼はシングルス個人戦でベスト四入りを果たしていて、団体戦ではシングルスの主力として大いに活躍している。強烈で力任せの攻撃と言うよりも、シャープで計算された攻撃を売りにしていた。
一方で高二―B組からは、女子バドミントン部主将兼部長、加賀野舞侑が選ばれた。彼女も団体戦でシングルスの要として重宝されていて、個人戦では善人と同じくベスト四に入っていた。
高校生のバドミントン人口は女子の方が圧倒的に多く、同じベスト四でも舞侑の方が重みのある順位だった。だが、筋力で言えば男子の善人の方が断然有利であり、熱い戦いが好きな矢代にとっては何ともおいしい二人だったのだ。
試合は二ゲーム先取制で行われることになったのだが、試合は第三ゲームまでもつれ込んでいた。最初は羽根つきをしていた者たちも、次第に白熱した試合に目を奪われていき、動きを止めて二人のラリーに一喜一憂するようになっていった。これでは全くバドミントンの授業になっていないのだが、矢代も釘付けになっていたから生徒達も安心して試合を観戦することが出来た。
第一ゲームでは十点もの差をつけて舞侑が勝利した。この得点差にB組の生徒は誇らしさを混ぜた歓
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