第5話
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しい小話をして励まそうとした。だから、ここ数日の教室は担任も不思議に思うくらい賑わっていた。
せめて部活中では先輩たちに迷惑をかけないようにしようと、結月は精一杯気丈に振舞っていたのだが、ふとした瞬間に気が緩んでしまうせいで、部員からは軽いスランプに陥っているように見えてしまっていた。
もちろん、部員の悩みを解決するのも、また部長の仕事である。ある日、沙織は結月を稽古の後に呼び出した。
「座って話そうか」
沙織はきれいに整理された部室の真ん中に長椅子を移動させる。結月はすぐに手伝おうとしたが、沙織は遠慮した。
沙織が長椅子に腰かけた後、結月は一礼して、いくらか間を空けて座った。沈黙が続く中で沙織は、結月が緊張しているからではなく、落ち込んでいるから黙っているのだと考えていた。そして、実際のところ、その通りであった。
「最近、どうしたの」
責め立てる意思はない、と分かってもらえるように、沙織は結月に優しく問いかけた。
「すみません」
「謝らなくていいよ。何かあったら話してみ」
うつむきがちになっている結月の顔を沙織が覗き込む。結月は苦笑いをした。
「剣道のことで悩んでたり?」
「いいえ、違います」
結月は胸の前で両手を小刻みに振る。
「私的なことなので、自分で何とかします」
「自分で何とかできないから、悩んでいるんでしょ?」
沙織の言葉が遠慮なしに心に突き刺さり、結月は返答できなかった。
沙織は結月が何に悩んでいるのかは分からなかったが、それでも何かの足しになるだろうと、彼女に一つの教訓を授けることにした。
「いい、良く聞いてね」
沙織が人差し指を細かく振りながら自分の顔の前に出す。結月はそれをちらりと見た後、沙織の目を見た。
「中学生って言うのは、はっきり言って小学生に毛が生えただけなんだよ。かっこつけて大人びた行動をしようと思っても、所詮は子どもだから、自分のことしか考えていない。こういうのをガキって言うわけ」
沙織は途中から口調を変える。
「でもね、高校生は中学生の延長線上であるべきじゃない。大学生として自分のやりたい学問をして、社会人になったら自分の仕事に責任を持って働く。そういうような人間になるための、助走期間であるべきなんだよ」
「助走期間ですか」
結月はぽつりと言葉を口にする。
「そう。これは仲良い奴の受け入りなんだけどさ。良く大人って、自立しろー、自立が大事だーって言うじゃん? でもね、うちらに必要な『じりつ』は違うんだってさー」
沙織が大きく伸びをする。
「必要なことって、なんですか」
結月ははっきりとした口調で、沙織に問いかけた。沙織はなぜか得
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