第二話「男の決断」
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を脱いで衣類を絞るくらいはした方がいい。風邪を引いてしまう。
岩陰にそれぞれ入って服を脱いで水を搾り取る。
「……」
あの岩陰に、弥生が裸になっているのかと思いながらも、必死で妄想を振り払った。
*
その後、俺たちは慣れない足でゴツゴツが多い河原の地帯をひたすら進み続けた。
しばし、休憩を挟みながら進んでいくが、どれほど歩いても景色は変わらなかった。
相当流されてしまったのか、それとも道が違うのか、不安になるがそれでも川の流れに沿って河原を歩き続けた。
時期に陽は暮れはじめ、足元がわからなくなった頃には大きな岩場を見つけてそこに寄りかかって座り、一夜を明かすことになった。今夜はここで野宿ってことになる。
慣れない手つきで、弥生と共に火を起こした。時間はかかったが、弥生の知識にフォローされてどうにか焚火を起こすことに成功した。
「本当に、ごめんなさい……あなたを巻き込んでしまって」
そう、罪深そうに謝る彼女だが、俺は別に気にはしていなかった。
「別にいいさ? どうせ、俺なんて……」
どうせ、俺なんて居ても居なくても関係ない人間なんだから……そう、行ってしまいそうになって口を閉じた。
「……どうしてですか?」
しかし、彼女は自分を非難する俺に疑問をかけた。
「だって……その、実はさ? 俺って、こう見えてニートなんだよね?」
誤魔化そうにも、無理だから俺は思い切って自分の正体を言った。
「……?」
すると、少女は首を傾げた。俺はそんな彼女に構わず話を続ける。
「小さいころから何をやっても上手くいかず。高校を卒業してもそれは変わらなかった。結局は、不器用な性格のせいで仕事もロクにこなせず、職場を転々と変えながら、最終的に社会から見放され、今の俺は無職って形になっちまった……カッコ悪いよな? マジで……こんなダメで心の弱い男は、この社会で生きて行く資格はないのかな?」
そうウジウジしている俺を見て、彼女はゆっくりと口を開けた。
「……そんなこと、ありません」
「……?」
そんな弥生に俺は振り向いた。
「だって……あのとき、私の手を握って一緒に逃げてくれたではありませんか?」
「でも、崖から落ちたりして、危険な目に会わせたんだぜ?」
「それは私の台詞です。私のせいであなたにあんな怖い思いをさせてしまったから……それに比べ、あなたは行き倒れになった私を何の疑いも抱かずに助けてくださったではありませんか? 人の価値とは、器用・不器用で決まるものではないのですよ?」
「けど、やっぱ自信がないよ……」
「自信がなければ、今頃私とこの場所にいたりしませんよ?」
と、弥生は優しく穏やかな目で、その柔らかく温かい両手で俺の手を握る。俺は、顔を赤くして目も丸くした。
「何度も言いますが、やなたは逃げるとき、私の手を引いてくれ
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