月下に咲く薔薇 1.
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れたのだ。
実際には仲間達の監視下にあったとはいえ、囮としてアイムやライノダモンMDに狙われたのだから扱いが良かったとは思っていない。
更にロックオンが念押しする。
「いいか、クロウ。そもそも細胞活性化装置なんて代物は、パイロットとクルーをきりきり働かせる為トレミーに積んでるんだ。ソレスタルビーイングの俺達にお優しい気配りをするくらいなら、他のチームの連中に気を回してやるんだな。少なくとも俺は遠慮しとくぜ」
頑固だな。諦めて、クロウはふっと小さく息をついた。
「なら、ティエリアにコーヒーでも差し入れてやるか」
「ああ、その方がいい」
「わかった」
それ以上は、思っている事を言葉にできなかった。コクピットを降りて尚流れ出る汗が、ロックオンの強がりを如実に語っている。或いは、痛みが蘇っているのかもしれない。
しかし、手を差し伸べれば、彼はその手を払いのけ更に激しく怒るだろう。
「ほら。そんな顔をするなって。これでも少しづつ回復してるんだ」
こちらの顔色を読んだらしく、ロックオンが汗の流れる顔で口端を上げた。
「そうか。なら俺は、先にシャワーを使わせてもらうぜ」
くるりと背を向け、クロウはいつもの歩速で歩き始める。
呆れつつも敬意が湧く。ロックオン・ストラトス、全く大した精神力の持ち主だ。
と、背後から件の男の声がする。去ると決めたクロウを、不意にロックオンが呼び止めた。
「どうした?」
慌てて振り返るが、小さく見えるガンダムマイスターは片手で否定を示しそのまま行くようクロウを促す。
明らかにロックオンは、何かを言いかけてやめた。それを訊きに行かなくてもいいのだろうか。
クロウは自らに問いかけ、NOと結論を出す。誇り高き名スナイパーをこれ以上刺激する事は避けたかったからだ。もし必要を感じれば、後々向こうから言い出すに違いない。
そしてクロウは、ロックオンが何がしかを叫んでいた事そのものを記憶の引き出しにそっと収納した。
「2月」のラベルを張った引き出しの中へ。いつまでも覚えておくつもりで。
− 2.に続く −
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