月下に咲く薔薇 1.
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青みがかった月の光が、凹凸の少ない夜の地上を遍く照らしている。
さながら太陽の真似事でもしているかのように。しかし、決して同じ光景を描き出そうとはせず。
元々そこには、開発から見捨てられた無人の岩砂漠が広がっているだけだった。日のある時刻に眺めても、500メートル先と3キロ先にある景色の違いなどは無いに等しい。視界を遮る自然物は見当たらないのだから、降り注ぐものが陽光であろうと月光であろうと、位置と距離を確認する為にクロウ達は機械の表示のみを頼る。他の選択肢は無かった。
確かに密会向きの時刻と場所ではある。演習や実戦に適した地理的条件を備えた所で日付が変わる直前に会おう、というのだから。
但し、その密会が穏便に始まり終わると信じている者は、ZEXISの中に1人もいなかった。接触を望んだ者のメールが、実に怪しげなもので満たされていたからだ。
故にクロウも、EAGLEをブラスタの右手に握らせたまま空中に留まっている。
地上からの精密射撃は、ロックオンとミシェルの担当だ。
「わざわざこんな時刻を指定しやがって。自分の命が危なくなるとわかっていねぇのか?」
朧気な像を結ぶだけの月光下の景色に、クロウは些か不満だった。
レーダーと高精度の狙撃システム。それらが絶大な効果を発揮するといっても、レンジ内に突然現れる次元獣に反応するなら夜より昼の方が当然いいに決まっている。母艦3隻、友軍機20機以上で合流希望ポイントとその周囲を固めていても、コクピットに体を収めているクロウは神経が張りつめている激しい緊張状態を自覚していた。
この闇の中に何者かの印が現れると確信しているのだから、当然の対応だ。接触を望んでいる相手は味方とは限らないし、もし敵でないとしても他の襲撃者が無残な肉塊にしてしまう前に保護してやるべきだろう。
インベーダーにイマージュ、ヘテロダイン、次元獣といった異形から、インペリウム帝国に、GNドライヴを搭載したトリニティのガンダムまで。人類の平和とやらを脅かす脅威は、何と種類が豊富になった事か。
「こいつぁ、待ちぼうけを食ってる男の気分だぜ…」
現地時間の表示が、ふとぼやきたくもなるクロウの心境を僅かに逆撫でした。既に日付が変わった後なので、時分共にとても低い数値に置き換わっている。無為に過ごしている時間は積み増される事なく、日付の加算に吸収されていた。
そろそろ、時計が時刻を刻むところを見るのが嫌になってくる。接触希望者に何かが起きたかさもなくば相当にずぼらな性格なだけ、と思い始める自分がいる。
人革連側は、ZEXISの侵入を既に感知している筈だ。その領土の主をなるべく刺激せずに済むよう、スメラギは指定時刻5分前に到着という気配りの調整をやってのけた。
間違いなく、その配慮は無に帰している。
ZE
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