Vivid編
第二話〜リハビリとこれからと〜
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シャッハが少し名残惜しそうな目をしていたがそれに気付いた人はいなかった。
一度目を瞑り、深呼吸をしたカリムは先ほどよりも幾分か軽快に口を動かし始めた。
「それで、本当に体調の方は大丈夫なのですか?」
「……あれ?」
その質問にライは疑問の声を漏らし、シャッハの方に視線を向ける。
昼間、ライのリハビリに付き合う形で同行しているシャッハであるが、何もそれは完全な善意というわけではない。監視と個人に対する借りを作るための一種のポーズも含まれている。それをなんとなくは察しているライはシャッハから事の詳細を聞いていると思っていたのだ。
ライの視線の意味に気付いたカリムとシャッハの二人は苦笑いを漏らしていた。
「一応、リハビリの概要は知っていますし、シャッハからの報告も聞いているのですがやはり本人からのお話が一番信頼できるので」
その言葉を聞くとライは納得すると同時に自身の考え方を恥じた。
他人を与えられた情報だけで推し量るような考え方しかしないのは、理解し合う上で誤解を招きやすい一番の要因であるのだから。
(しっかりしないと、な)
一度、内心で念を押すと、ライは口を開く。
「これといって問題はないけれど、でも以前の――――JS事件当時の時ほど動けるとは言えない、かな」
右手を握ったり開いたりを繰り返し、リハビリ中の感覚を思い出しながらそう口にする。
ライはそう口にするが、Cの世界で過ごしたことで魔法を使用する精度自体はかなりの進歩を見せている。それだけでなく、もともと感覚的に使用していた部分が多かったライであったが、最近の知識としての補填も行い感覚的に不透明であった部分も明確な操作をするようになり、ある程度魔力の燃費も上がっている。
問題は身体強化にしろ、加速魔法にしろ、それを耐えうるだけの筋肉や骨の強度が落ちていることで、この問題は普段の食生活や運動で地道に回復して行くしかない。そしてその辺りの魔法の微調整は魔法操作の精度向上からアジャストさせやすくなっているので、現時点での問題らしい問題は特に存在しなかった。
ライの返答に安堵を表すような笑みを零したカリムは、ふと目に入ったある物に興味を引かれた。その視線に気付いたのかライも彼女の視線の先に目を向けると、そこには折りたたみ式のボードが置かれていた。
「それは――――」
「あぁ、お見舞い品の中にあったチェス用のボードだ」
ライの昏睡中、本人が眠っていることもありお見舞いの品は花や折り鶴といった使うことがなくても邪魔にならない物がほとんどであった。その為、ライが目を覚ましてからはある程度使用頻度の高いものを持っていこうとした人が置いていった物の一つがそのチェスボードであった。
「体を休める時によく息抜きで
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