解かれる結び目 10
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
貴方に心から笑って欲しい。
これから先の、貴方の本当の笑顔を、貴方の隣でずっと見ていたいの。
眠りたくなんかない。
貴方の傍に居たい!
「嘘吐き」
低くなった声が、心臓に鋭く突き刺さる。
ザ……ッと背中に滑り落ちる冷気で開いた私の視界を。
泣きながら微笑むアルフが埋め尽くした。
「マリアは嘘吐きだから、信じないよ」
私の額に、ついばむよりも軽いキスを残して。
離れていく。離れていく。
貴方の心が。貴方の存在が。
私から離れていく。
両腕で繋ぎ止めようとしても、追いつけない速さで。
「……なら、信じなくて、いい」
アルフの体から腕を解いて。
「マリア? 何を……っ!?」
私が着ている服を全部、脱ぎ捨てた。
夕方の冷えた風が全身にまとわりついて、剥き出しの肩を震わせる。
「私は貴方が嫌いよ、アルフリード」
「……っ」
「貴方なんか……! 貴方なんか、大っ嫌いッ!! その顔も見たくないし、その声だってもう聴きたくない!! これ以上傍に居るなんて、絶対に嫌!! 二度と触られたくないし、無断で私の心に入って来ないで!! 私の心には、貴方の居場所なんて微塵も無いのよ!!」
何をしているの? 私は。
川辺で全裸になって、泣きながら大声で叫んで。
羞恥心とか全部、川の水に流してしまったのかしら。
みっともない。
女神として信じられない言動だわ。
神々に知られたら、どんな罰を下されるか。
でも、良い。
どうせ失うなら、全部まとめて失ってしまいたい。
アルフからの想いも、アルフへの想いも。
情けない自分自身も、全部、全部、全部。
私の手をすり抜けるくらいなら、いっそ貴方に壊して欲しい。
他の誰でもない、貴方に壊して欲しいのよ、アルフリード。
「大嫌いよ、アルフリード。貴方なんか、この世界で一番だいっきらい! この世界に存在する誰よりも何よりも、貴方が一番だいっきらい!!」
「…………本当に……」
また。アルフの両手が私の頬を捕らえて。
今度は、壊れ物に触れるような手つきでそっと、たどたどしく撫でた。
触れ合ったそこだけが、じんわりと温かくなる。
「君は、どうしようもない嘘吐きだな」
情けない。
きっと、今の私以上に情けない表情で。
アルフの両腕が、私の体を優しく、柔らかく包み込む。
「神々に処刑されそうになったら、君の嘘のせいだと告発するからな」
冷えた体が、外側と内側から融けていく。
速度を上げていく心臓の音が、とくん、とくんと、耳の奥で響きだす。
「知らないわ、そんなの」
「……酷い女」
唇を重ねる。
体を重ねる。
言葉
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ