解かれる結び目 10
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「……そう……」
旅の間中、いくつもの惨劇の舞台を、感情が麻痺しそうなほど見てきた。
それでもやっぱり、誰かの悲報には苦いものがある。
顔を知っている相手のものとなれば尚更だ。
「今この瞬間にも移動されるかも知れない。準備ができ次第、すぐに行」
「! 待って!」
「ん?」
え?
「どうしたんだ? マリア」
……えーと。
私、どうして引き止めんだろう。
アルフの言う通りでしょう?
魔王が一つ所に留まってくれてるなら、今が対面する好機じゃない。
これまで、その為に長い旅を続けてきたのに。
ここに来て二の足を踏んでどうするのよ。
本当にどうしたの、私?
「……アルフリード。一晩様子を見てからにしないか?」
「コーネリア?」
「確かに情報通りなら私達にとって良い機会になるが、相手は時々悪魔達を利用して私達を探ってる気配を見せてただろ? 多分一筋縄ではいかない。状況を冷静に見極める時間が必要だと思う。もちろん、準備は進めながら」
「ん……」
いつの頃からか、悪魔達は本格的な勇者狩りを始めるようになっていて、退治の頻度が異常に上がってきてた。
数体の悪魔から、レゾネクトの意思が関係してるとは聞いていたけど。
「闇雲に特攻すれば良いってもんじゃないからな。レゾネクトは私達の旅の最終目的だ。焦らず、どんと構えていこう」
最終目的。
…………そうだ。
魔王レゾネクトは、勇者一行の旅の終着点。
彼を退けることで、私達の旅は終わる。
命を脅かす凶行への恐怖から世界を救えるんだ。
コーネリアとウェルスは実家へ帰って、子供達と再会できる。
アルフは世界を救った勇者として、故郷に堂々と凱旋するだろう。
私は神殿へ帰り、天神の一族最後の一柱として……
「…………」
「マリア?」
…………どうして?
まだ叶ってもいない未来なのに、どうして涙が溢れるんだろう。
それは良いことの筈なのに。
皆が、今よりもずっと幸せになれる、意味がある別れなのに。
それぞれの道に戻って、先へ進むだけなのに。
考えると、胸が痛い。
三人が顔を見合わせて困ってるのに、涙が止まらない。
……ああ、そうか、……私……
「……分かった。コーネリアとウェルスは、装備の手入れを念入りに頼む。マリアは俺と一緒に来て」
「え?」
「ごゆっくり〜〜」
私達は最近、人間が集まる場所にはできるだけ近寄らないようにしてる。
勇者一行を狙う悪魔の襲撃に巻き込ませない為、極力交流を避けてきた。
情報を集める時は、四人の中で一番目立たない容姿のウェルスに頼んで、大きな街にこっそり紛れ込
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