プロローグ/バーサーカー
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ルナガンドは、恐らく生涯初めて、満面の笑みを浮かべた。
「やった……やったぞ!」
ついに!
ついに北欧の神を召喚した!
この自分の、使い魔として!
興奮冷めやらぬヴァルナガンドは、子供のように目を輝かせて魔方陣の中のサーヴァントに近づき──
違和感を感じて、はたと立ち止まった。
──巨人にしては、小柄過ぎはしないか?
北欧神話に登場する巨人とは、俗に言う『ジャイアント』ではなく『旧人類』とでも言うべき存在だ。そのため、身の丈自体はせいぜい大柄な人間とたいして変わらない。さらに今回はそれを、さらに人間の枷に嵌めて召喚しているのだ。当然、小柄にはなっているだろう。
しかし、それにしても召喚されたサーヴァントは小柄すぎた。まるで──そう。
「問うわ。貴方がマスター?」
女。
そう、召喚されて来たのは、燃えるような真紅の髪の、グラマラスな白人美女だったのだ。
「なっ──」
その余りの美貌と、そして予想外の存在であることに押された。ヴァルナガンドの反応が遅れる。
すると女は不機嫌そうに表情を歪め、再度問う。
「聞いてるんだけれど」
「あ──ああ。そうだ。私がマスターだ」
「そ。じゃぁ契約完了ね」
おかしい。
ヴァルナガンドは内心でそう確信する。
トールは確かに赤毛だが、がっしりした大男の筈だ。そもそも召喚したのは確かにバーサーカーなのに、何故普通に喋っているのか。
その疑問は、無意識のうちに口をついて出た。
「貴様……何者だ? トールではないのか?」
「トールよ」
「馬鹿な!」
回答は迅速。そして驚愕するべき内容だった。思わずヴァルナガンドは叫んでいた。
誰が想像できようか。まさか、巨人の男として伝えられていたトールが、美女であるだなどと。
するとトールを名乗る女は、気だるげな表情で答えた。
「貴方が『ヒトとしてのトール』を召喚したからこんな事になったのよ。
ま、安心しなさい。ちゃんと強いから」
確かに、マスターの特権として、脳裏に表示されるサーヴァントのマテリアルは、彼女がバーサーカーであること、そして非常に強力な英霊である事を伝えていた。
それでも何とも言えない感情にヴァルナガンドが悶々としていると、バーサーカーが突如として問うた。
「で、酒は?」
「……は?」
「『は?』じゃ無いわよ。酒よ酒。ここニホンとかいう場所でしょ? 日本酒とかいっぺん呑んでみたかったのよね」
わりと無口、というか面倒そうな話し方をする女だと思っていたのだが、酒の事になると大層饒舌になるのだろうか。ペラペラと捲し立てるトール。
「待て。そんなものはない」
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