プロローグ/バーサーカー
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かったと聞く。
──愚かしい。
──自分であれば、より強力な英霊を召喚し、しかも隷属させて見せるだろう。
ヴァルナガンドは、そう自負していた。
だから。
この聖杯戦争に参加するためにわざわざ極東の辺鄙な島国、しかも本島ではなく人工島まで来たとき。己の右手甲に令呪が浮かび上がったそのときでさえ、ヴァルナガンドには『当然だ』という思いしかなかった。
想定通りに手に入れた、サーヴァント召喚の触媒。
──それは、『ナニカの切れ端』だった。
真紅の布。明らかな神気を纏った、何らかのカケラ。
その名を。正体を。そして呼び出されるであろう英霊の正体を。ヴァルナガンドは知っていた。
その布は、『腰帯』の切れ端だ。身につけたものの内から沸き上がる力を何倍にも増幅させる魔道具。
名を、『メギンギョルズ』。北欧に伝わる雷の神が着用したという装備。
そう──ヴァルナガンドが呼び出そうとしていたのは彼の者。北欧の雷神、『トール』であった。
本来聖杯戦争では、神々……神霊は召喚できない。神霊を召喚できるくらいならば、聖杯に頼る必要もないだろう。
しかしその神格を、『神』ではない存在に貶めて召喚することは可能だ。その神が、そもそも完全な神ではないのなら、なおさら。
雷神トールは、半神の巨人族である。父は主神オーディンであるが、母は巨人だ。
神ではなく、巨人としてならば。
彼を召喚することは、可能だった。
しかし元が神霊だ。トール自身、巨人としての側面よりも神としての側面の方が強い。召喚に失敗する可能性も捨てきれなかった。
しかしヴァルナガンドは迷わない。自分には可能であるという確固たる自信と、三日かけて完成させた完璧な 召喚環境がそれを裏付けているからだ。
故に。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師××××・ヴァン・ガルム」
今、迷いなく召喚の詠唱を紡ぎ上げる。
「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王国へと至る三叉路は循環せよ──」
それからヴァルナガンドは、彼の持つ全力でもって英霊召喚の呪文を続けた。いくら彼でも、まさか手を抜いて目当ての英霊を呼び当てる事が出来るとは思っていない。慢心は敵だ。支配者の身を滅ぼすのは油断である。過去の亜種聖杯戦争でも、油断したために自らのサーヴァントに裏切られた例もあると聞く。
だがヴァルナガンドには秘策があった。召喚した英霊は圧倒的な強さを持つ故に、もし裏切られた場合はいくら天才といえども成す術もない。英霊と人間の間にある隔絶は絶対的だ。余程サーヴァントが弱い場合
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