精神の奥底
49 避けられない未来
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思わず自分でもバカバカしいとは思った。
「聞こえてるわけないか」
「…兄さん」
「!?…起きてる?会話…成立した?」
思わぬ返事に呆気にとられた。
気づいてはいたが、実際に言われると驚いてしまう。
だが少し後ろめたさもあった。
今まで何一つ兄らしいことをしてやれなかった、だというのに自分のことを兄だと思ってくれている上、好きだと言ってくれるのだ。
思わず寝ているメリーを抱き寄せて、口紅を使わずとも綺麗な桜色で柔らかなメリーの唇にキスをした。
暖かく甘ったるい感触が広がり、全身が蕩けそうだった。
「僕も大好きだよ、メリー」
彩斗はゆっくりと起き上がり、部屋を出た。
「兄さん…とたこ焼き」
メリーの事を愛しく思う程、Valkyrieへの怒りがこみ上げてきたからだ。
きっと見るに耐えない憎しみまみれた酷い顔をしているに違いない、メリーにはこんな顔を見せられないと思ったのだ。
それに少し気がかりな事があった。
「…ハートレスもさすがに寝てるか」
2階のリビングにはハートレスはおらず、窓際のテーブルの上にはコーヒーカップとその横にジン、そして何かの資料が置いてあった。
資料を読みながら、コーヒーにジンを入れた即席のイングリッシュコーヒーを作って飲んでいたらしい。
彩斗は資料を手に取る。
何かの論文のようだが、導入部を流し読みした辺りで止めた。
導入部はある程度理解できたが、導入部の段階で本論に手を伸ばすのを諦めた。
本も最初の数ページを読めば、何となく分かってしまう。
文章の書き方・表現といった僅かな情報だけで、書いている人間がどんな者か、自分とは仲良く出来るタイプかどうかが感じられる気がしていた。
もちろん、最初の数ページで決めつけるのは褒められたことではない。
だがこれは自分に合わないというよりは、書いている人間がどれだけ偉大な人間かがよく分かってしまい、むしろ自分程度の人間が読んではいけないと思ってしまったのだった。
ため息をついてテーブルの上に戻し、本棚の仕掛けを使って地下のガレージへと向かう。
ガレージにもハートレスはいなかった。
ガレージの中央部のハートレスのイスに座る。
「…ハートレス、やっぱり僕に何か打ったな」
PCデスクの上に置かれた注射器を見て、ハートレスが彩斗に対して使ったのだということが分かった。
メリーに使った可能性もハートレスが自分自身に使った可能性もあったというのに、その可能性を考えもせずに結論づけた。
身体の疲労が無くなったせいか、シンクロがいつもよりも強く働いている。
触れただけでハートレスがこれを持って、部屋に来て、胸の痛みで苦しんでいた自分に注射したことを確信する。
彩斗は続いてPCの電源を入れる。
起動と同時に大
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