精神の奥底
49 避けられない未来
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。
だがその様子は少年に見られていた。
少年は出て行った後、すぐ近くに潜んでいたのだ。
「あららぁ...安食ちゃんも、もう限界かなぁ...」
『ン?ドウいうコト?』
少年は電話を掛けていた。
安食に頼まれた高垣奪還のために、自分の下の人間に指示を出す必要があったからだ。
だが少年は安食が例の薬を飲んでいるのを見て、ため息をついていた。
「いやね、安食ちゃんの経歴は知ってるな?」
『Ja、naturlich.<えぇ、もちろん>』
「その壮絶な生い立ちが安食ちゃんの内面に影響を与えた。安食ちゃんは最初から、あんな奴だったわけじゃない。あらゆる暴力で後天的に人格を狂わされた人間、ある意味では被害者なのさ」
『ヘェ』
「だが同時に常人を遥かに超えた精神力を得た。ユナイトカードを使った進化体の想定を超える力を持ったナイトメア・テイピアに進化した上、精神干渉をまるで受けつけない」
『デモ、薬ナイとダメなんデショ?』
「同時に脳内のバランスが崩れてしまってるんだ。精神だけが強くなった一強他弱状態、そのせいで他の部分が圧迫されて悪影響を受けている。特に人格の部分が」
『アァ...ダカラ、温厚ソウに見えテルと思っタラ、イキナリキレたりスルの?』
「まぁ、そんなところだ。それを維持するために必要な薬だ。依存性は少ないが...耐性がつきやすく、徐々に効果が薄れていく。個人差はあるだろうが、薬に手を出し始めたら、約10年程度で殆どと言っていいくらいに効き目は無くなる」
『ジャ、普通の人ダト思っテ相手二しチャダメ?』
「そうだな。身体はともかく中身は普通の人間じゃない。その境遇に頭の中を壊され、誰も意図しないところで自然発生した後天的人格破綻者だ。価値観を分かちあったり、理解を求めるのは難しいな」
『チョット、難しいニホン語多スギ…』
「ん〜『ボーン・アイデンティティー』とか観たことあるか?あれのジェイソン・ボーンみたいなもんだ。いじめによる暴力や精神的苦痛が、あの映画の計画みたいな睡眠剥奪、拷問に近い状況を作り出し、無意識のうちに人格改造が施された」
『Aha!<なるほど!>』
「結局、安食ちゃんが完全に人間じゃなくなるのは、避けられない未来ってことだ。じゃ、30分後に」
少年は電話を切ると、ため息をついた。
互いに自分を痛めつけてきた社会を嫌い、それに反発するように犯罪に走り、自分の寿命を激しく削りながら生きている彩斗と安食に何か近いもの感じていた。
そんな2人がぶつかり、どちらか勝ち、どちらかが負ける。
しかも、2人は放っておいてもぶつかり、結果としてどちらかが負けるのは想像に難くない。
「でも悪いけど、彩斗にはまだ死んでもらっちゃ困るんだよなぁ…」
スターダストが現れることを予期していたと言
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