暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
[25/25]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き
憶測みたいだけどね――そう言って、姉は笑った。
「お姉ちゃんはどう思うの?」
「私? ……そうね。そんな事があってもいいんじゃないかって気はするわ」
 もっとも、もう巻き込まれるのはゴメンだけどね――姉の言葉に、ふと怖くなる。
「あの『村』は、まだあるのかな?」
 その恐怖はすぐに言葉になっていた。
「どうかしらね。忘れられたくないって言うなら、少なくともここに忘れられない人間が二人いる訳だけど」
 恭也と光君も忘れていないでしょうから、正しくは四人ね――その言葉に、少しだけ怖さが薄らいでいく。光の予想が正しいなら、あの『村』はある意味で目的を達成したという事になる。それが、あの『村』が本当に望んだ形ではないとしても。
「さ。怖い話はもうやめて、早く寝ましょ。大丈夫。光君ならケロリとした顔で帰ってくるわよ。もちろん、なのはちゃん達を連れて」
 そうでしょ?――姉の言葉に頷く。今までだってずっとそうだった。私達夜の一族にも、本物の怪物にも、光はきっと負けない。それなら、きっと大丈夫だ。
「ほら。この子もそう言ってるわ」
 光がくれた黒猫がベッドの上に飛び乗ってくる。
「うん」
 頷くと、黒猫が小さく鳴いた。そして、そこで丸くなり、長い尻尾をくゆらせる。この子も一晩私に付き合ってくれるらしい。
 そして。その日の夜。私は夢を見た。それは、『曾根田幸恵』の残り香だったのかもしれない。稲谷村の、なんてことはない――皆が笑っている、そんな一日の夢だった。
 それは、とても幸せな夢だった。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ