暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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ね。確かここに来る前に何ヶ所かあったと思ったし」
 その場所に無事に戻れればいいのだが。そんな事は思っても口にせず、二人に案内を頼む。それからしばらくして。
「まぁ、こんなところか」
 倉庫から見つけた二振りの鉈を軽く振り回しながら、恭也が満足そうに言った。ベルトにはさらに錆の浮いた五寸釘が何本か差し込まれている。
「ないよりはマシってところね」
 一方、忍は渋々といった様子で、使い込まれた鋤を構える。使いようによっては槍の代わりになるだろうが――義姉の姿は、農具として使う際にもまるでなっていないと言わざるを得ない。まぁ、義姉にしても義妹にしても深窓の令嬢なのだから仕方がないが。
「そ、そんなに危ない事をするの?」
『まぁ、諦めて覚悟を決めろって』
 すずかには素直にリブロムを預けてある。農具を持たせるより、よほど安全で確実だ。
 ともあれ、これで準備は整った。
「それで、どうするんだ?」
「こうするのさ」
 恭也の言葉に、俺は適当な民家に向けて掌を向け――そのまま火球を叩き込んだ。
 爆破魔法。炸裂した爆炎は民家を飲み込み、たちまちのうちに燃え上がる。だが、それを見届ける事はせず、俺は続けて他の民家にも火球を撃ち込んだ。程なく、辺り一面が火の海になる。
「お、おい! いきなり何を……!」
 何も特別な事をするつもりはない。タルタロスの廃墟で恩師達がやったのと同じ事だ。
「村を滅ぼしてやるのさ。そうすれば、この村の存続を願った誰かは怒り狂って俺の手の届くところに出てくるはずだ」




『相変わらず容赦ねえなぁ……』
「止めなくて良いの!?」
 のんびりとしたリブロムの声に、思わず叫んでいた。もうすっかり辺り一面大火事で大変な事になっている。
『この村から出れねえと困るだろ?』
「そ、それは困るけど……ッ!」
 出られないのはとても困るけれど、このまま止めないのは何だかとても悪い事をしているような気分になる。
『なら仕方ねえ。それに、村が無人だからこれで済んでるんだ』
 無人じゃなかったらどうなっていたの?――喉まで出かかった疑問は、そのまま何とか飲み込む。そう何回も見た事がある訳ではないけれど、魔法使いモードになった光は結構容赦ない。今だって、このままいくと、本当にこの村が焼け野原になってしまいそうだ。
『おっと。仕掛けてきたか……?』
 リブロムが呟くと同時、景色が一瞬だけ歪んだ。そして、
「直ったの……?」
 次の瞬間には景色が元に戻っていた。焼け落ちたはずの家はみんな元通りに戻っている。それに何となく安心してしまうのは『曾根田幸恵』の名残だろうか。ともあれ、急に炎が消えたせいか、少し肌寒く感じる。
「いや、時間が先に進んだんだろう」
 光は近くの家の新聞受けから新聞を抜き出し、そん
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