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その魂に祝福を
無垢の時代
山郷で迷う吸血姫
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死って……。何だってすずかをそんな目にあわせたんだ?」
「正気じゃなかったからだよ。上手くいってくれれば、当面の危険は取り除けるはずだ」
 闇雲に怒り狂わなかった所に二人からの信頼を感じつつ、応える。
「しかし、お前達は正気なんだな」
 一見して、明らかに二人とも高町恭也と月村忍だった。意外だと思うのと同じ程度に納得してもいる。少なくとも恭也は精神の鍛錬もしている。そう簡単に相手の術中にはまりはしないはずだ。
「正気だと。いい加減、発狂しそうだが?」
「嘘つけ。いや、そもそもそういう事じゃなくてだな……」
 恭也と馬鹿なやり取りをしていると、ビクンとすずかの身体が脈打った。
「う、ぅん……」
 喘ぎ声に似た音を立てて、止まっていた呼吸が再開する。どうやら、蘇生したらしい。
「あ! すずか、気付いた?! 良かった」
「お姉、ちゃん……?」
 さて。博打の結果は如何なものか。二人に近づき、問いかける。
「自分の名前、言えるか?」
「え? 月村すずかだよ。急にどうしたの?」
 きょとんとした顔で、すずかは言った。
『どうやら博打には勝ったらしいな』
「ああ。そうらしい」
 リブロムの言葉に頷く。決して勝算なく挑んだ訳ではないが、絶対の自信があって挑んだ訳でもない。安堵の息は隠せなかった。
「それで。結局何だってそんな危険な真似をしたんだ?」
 すずかが自分の足で立ちあがってから、恭也が言った。
「すずか。今までの事は覚えているか?」
「今までのこと? ええっと……。確かこの村から出られなくて――」
 帰りたいと強く思った。すると、急に帰れるような気がした。けれど、
「お姉ちゃん達の事が、急に知らない人みたいに思えて。……怖くなって、逃げ出してからの事は良く覚えてないよ」
 おずおずとそのような事をすずかは口にした。お世辞にも要領を得た説明だったとは言い難いが、それが彼女の精一杯の説明である事は明白だった。すずかを含めて三人が、疑問の眼差しで俺を見た。
「この村――この魔境の影響だ」
 もっとも、俺とて全てを説明できる訳でもないが。それでも、たった今自分が経験したものと、古い記憶とを継ぎ接ぎして導いた推論を口にする。
「俺が出会った時、すずかは自分の事をこの村の村長の娘だと言った。それ以外にも、この村について色々と話してくれたよ。何も覚えていないか?」
 覚えていないなら、それはそれで別に構いはしないが。問いかけると、すずかはしばらく記憶を探るように目を伏せてから、
「稲谷村、だよね?」
「ああ。少なくとも、お前はその時そう言った」
「攻撃があったのはその後さ」
 あまり思い出させて、再び『曾根田幸恵』になられても困る。それ以上思い出さなくて良いと告げてから、説明を続ける。
「攻撃だと?」
「ああ
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