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志を抱き才と戯れた男
1話
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そ、解ったことがある。

「ええ、そう言う事ね。この戦いは私にとって飛躍の時。だから絶対に負ける訳には行かないの。だからこそ、聞きたい。貴方はこの戦、勝てると思うかしら?」

 静かに、曹操殿が尋ねてきた。その物言いは率直で、裏表がないように聞こえる。だが、そう思えるだけなのだろう。現状を鑑みるに、幾ら精強と名高い曹操軍といえども、相手が悪いのである。文若に聞いた情報から、相手は物資方面で致命的なまでの欠陥を抱えていると言えるのだが、それでも尚覆しがたい兵力の差が存在している。まともにぶつかれば勝負にならない。それが、両軍の戦力差を考慮した結論であった。

「まず、間違い無く敵を撃破る事はできないでしょう。どのような名将が戦ったところで、勝利することは不可能でしょう」

 間髪入れずに、自分の考えを述べる。そもそも、百万(・・)を相手に三万(・・)で撃破るなど、現実的では無い。どのような言葉を紡ごうと、夢物語でしかないのだ。だからこそ、断言する。勝てないと。

「ちょっと、戯志才!?」
「あら? 随分はっきり言うのね。でも、それだと貴方がここにいる理由が無いわね」

 俺の言葉に文若が慌てた。当たり前だろう。文若からすれば、勝つために呼んだ人材が、勝てませんと言ったのだ。その動揺も仕方が無い。
 だが、曹操殿は、俺の言葉と文若の様子を見て、楽しそうな笑みを浮かべた。その表情を見れば、言葉の意味を十分に理解しているだろうことが、容易に解った。試したわけでは無いのだが、曹操殿の実力はそれだけでも感じ取る事が出来た。文若の言葉通り、優秀な人なのだろう。

「然り。ですから、百万相手に勝てないと言うのならば、百万に勝たなければ良いのですよ」

 淡々と答える。相手が百万だから、勝つ見込みが無いのだ。ならば、倒すべき敵を変更すれば良いのである。黄巾残党の内訳は、かなり大雑把に言えば、精鋭が十万とそれ以外の者たちに分けられる。百万と言えば凄まじい大軍に感じるだろうが、実際に戦える部隊の数はそれほど多くは無かった。そもそも武器どころか食糧すらも足りておらず、だからこそ青州から?州まで足を運んできたのだ。

「前線となるべき場所に、砦が二つあると聞きました。其処を基点に、蛇となり戦い、時を待つのが上策かと」
「成程ね。と、するならば、遊撃部隊も欲しいところね。亀の様に手足を砦に隠し、背後から撹乱する部隊が」
「一つの砦が襲われれば、もう片方の砦から出陣し、遊撃部隊と連携し少しずつ切り崩す。それを繰り返せば、痺れを切らした本隊が現れる筈でしょう」

 首を打てば尾が助け、尾を打てば首が助け、胴を打てば首と尾が助ける。二つの砦と遊撃部隊を駆使し、そのような状況に持ち込み耐え続ける。曹操軍が勝つためには、それが必要だった。やがて
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