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志を抱き才と戯れた男
1話
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る。だが、病を持ってからは、体力は格段に落ちたと言わざる得なかった。それほど多くは無いが、血を吐く事もある。どこか、焦燥に駆られていると、はっきり感じる。その事を文若は心配しているのだろう。尤も、この少女の場合は、まともに働けるのかと言う意味合いが強そうだが。

「何、気にする事では無い。俺は曹操殿に力を貸すだけだよ。主として戴くつもりはない」
「どういう事?」
「見極める時間も無いと言う事さ。だからこそ、天命に従うのだよ」
「もしかしてあんた……」

 文若が、顔色を変えた。何か言葉を発しようとする。それに被せるようにして告げた。

「なぁ、文若。俺は、この世に生を受けたからには、何かを成したいのだよ。歴史に名を残す程の偉業など求めてはいなかった。できるならば、自身が心から認めた相手に、命を奉げたいと思っていた。だが、ソレは無理なのだろう。だからこそ、せめて自身の才で何かを成したいのだ。男として生まれたからには、臥して往生する気は無い」
「……。解った、何も言わない。精々頑張りなさい。あんたの命、残さず使ってやるから。だから、華琳様を勝たせてほしい」

 文若が目を見ていった。腐れ縁である。恐らくこちらの意思を汲んでくれたのだろう。その気持ちがありがたかった。文若らしい言葉が、どこか心地よかった。

「勝つさ。敵は百万の軍勢。その圧倒的劣勢を覆す。それを以て我が才を示すのだ。男として、人として、これ程心が躍る戦いもあるまいよ」
「そうね。あんたの才能だけは信頼してる。頼むわよ」
「ああ、最初で最後の大戦なのだろう。我が才、使い尽くそう」

 寝台から立ち上がり、剣を持った。重量感を感じる。軍人ならば、感じる筈が無いものであった。それを感じるのだ。剣とは命である。その重さが心地よい。そう思った。
 地図を出し、机に広げる。自分で持っている情報もあるが、文若が持つ情報はその比では無いだろう。それは個と組織の明確な差であった。情報を交換する。最初にそれを始めた。






「お初にお目にかかります。我が名は戯志才と申します。我が力を必要としていると聞き、助力に参った次第」

 曹操軍居城。軍議の間にて、拝礼を取る。直ぐ様本題に移れるよう、軍議の間での謁見となった。文若と曹操殿。二人の女性に向き直った。

「ふぅん、貴方が桂花の言っていた戯志才ね。さて、現状は何処まで解っているのかしら?」
「三万程で百万に挑み、威を示そうとしていると愚考いたします」

 視線の先には、美しい月色の髪を左右で結い、更には結った髪を回転させるような複雑な髪形をしている女性がいた。艶やかでありながら、冷めた瞳と視線が交わる。此れが、曹孟徳か。そんな事を考えつつ、言葉に応じる。文若ともある程度情報交換をしていた。だからこ
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