出来損ないが!
出来損ない、祝福されない
不必要な少年の話
前書き [1]後書き
八神暦8400年、永久の月。
13日目の朝、祝福されずに彼は産まれた。
そこには、産声を上げた子と、悲しみの涙を流した母、顔を歪めた乳母しか居なかったという。
彼の名はアンス(Unce)。
勉学も、剣術も、魔術も、戦いや政治に関することは何をやらせてもダメな子だった。
それを責めるものしか居らず、彼の得意な歌や料理は王子としてはしたない、と褒めるものは誰一人存在しなかったという。
それもそのはず。
8つの国は、初代の8人の勇者が治め始めたもの。国王は歴代の勇者がなのだが、遺伝的に産まれる子供は一人だけだった。
代々受け継がれる筈の遺伝子が、この火を司る国、プラーミアで変わってしまったのだから。
悪魔を押さえつけてきた勇者は8人。
プラーミアに産まれた男児は二人。
8400年も続く歴史を変えたアンスを、希望としてではなく、災厄として見たのだった。
無能ならばなおさらだった。
一方で、アンスは純粋だった。
だれかがいるところで料理はしなかったし、歌も止めろといわれれば素直にしたがった。
違うと言われればそう思い込んだ。
自分が生きる価値が無いと悟ったのは物心ついた瞬間に等しかった。
努力はした。だがすべて身を裏切った。
剣術は剣が上がらなかった。
魔法は煙も出なかった。
勉学は脳がついて行かず熱を出した。
枕を濡らす夜は数えきれなかった。
そんな彼を励ましたのは、実兄のホープだった。
自分と比べて完璧な彼は、母に溺愛されていた。
勉学は国家試験一位、魔術は聖の称号を取得、剣術は父をも圧倒した。
政治にも口を出し、近日では隣国との貿易再開の目処が立ったという。
アンスは、兄を尊敬しつつも羨んでいた。
そして、心の谷は深く暗くなっていった。
兄の励ましが卑下に聞こえた。
母に名前を呼ばれなくなった。
侍女が自分の食事を運んで来なくなった。
父の機嫌の悪い時は罪を着せられて牢に押し込められた。
生きる希望は、とっくに無くした。
だが、世界は彼を見限らなかった。
「お前だよ、俺の主人。」
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