第六十四話
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今の僕ではナギさんの足下にも及ばない。薄れていく意識の中でもその事実だけがはっきりと分かる。仕掛けを作動させることもなく敗れるのか。
「その程度なのか零樹」
そんなわけないと言い返したい。実際にこれが限界なのかと聞かれれば答えは否。隠し球というか本来の戦闘スタイルを取れば必ず食い付くことは出来る。だけど、アレでは戦いたくない。そんなことを考えているとナギさんに言われる。
「なんでお前ら一家はそんなに自分の最強の姿を嫌うんだ」
そうさ、僕の家族は皆最強の姿を嫌う。父さんはシンを、母さんは闇の魔法を、リーネ姉さんは全盛期の自分を、刹那姉さんは烏族の、そして僕も。それをナギさんは知っているのか。知っていてそう言うのか?
「あんたに何が分かる」
身体が限界に近いはずなのに立ち上がることができる。理由は簡単だ。僕がキレているから、僕の逆鱗にナギさんが触れたからだ。
「皆理解しているんだよ。理解している上で嫌いなんだ。何も知らない奴は過去に囚われるなと無責任なことを言う。だが、過去に囚われずに生きることなど普通の感覚の人には不可能だ。そんなことが出来るのは頭がお花畑な奴かジャンキーか頭が逝ってしまっているか、そんな奴らだけだ。ナギさんだって昔の、大戦期の頃の過去に囚われているのを否定はさせない」
「ああ、その通りだ。だがな零「だれど僕が囚われているのは過去じゃない」なんだと」
「ちょうどタイミングが良い、だから理解させてやる。それを見ても同じことを言えるか」
その言葉と同時に世界樹が光り輝く。予め世界樹に固有時制御を改良した陣を敷き、それをナギさんに宣戦布告した後に発動させ発光現象を早めさせた。無論、大会終了後に明日の祭りに使える様に再度操作はする。世界樹が発光現象を起こしたことで大気中の魔力が一気に濃くなる。それを体内にどんどん取り込む。取り込んで、取り込み切れない分を纏う。そして 僕の形が崩れる・・・・・・・。まるでスライムの様に僕だったものは形を変えていく。やがてそれはある形を作り出す。
赤い髪に整った顔立ち、何処か子供の様なのに安心感を与えてくれる様な大人の雰囲気を醸し出し、右手に自分の背と同じ位の杖を持つ男。
「おいおい、なんだよそれは」
「はん、見れば分かるだろう。これがオレの嫌いな最強の姿だよ」
口調が変化するが違和感は一切存在しない。何故ならオレは、ナギ・スプリングフィールドなのだから。
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