第五十四話
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った言える息子が亡くなったそうよ」
腹違いの兄、お父様の過去を見せてもらった時にいた魔王。それが亡くなった。お父様と同等の力と知識と経験を持った人が亡くなった!?
「どうして」
「それは」
「オレから話そう」
「お父さ……」
一瞬誰か分からない位に憔悴しきったお父様を見て言葉が詰まる。
「すまん、昨日からずっと泣いてたからな。酷い顔をしてるだろうが今は何も言わないでくれ。2、3日もすれば元通りになるから」
「ああ、今は存分に泣いておけ」
「まあ、色々と聞いておきたい事を聞かせてからな。何から聞きたい」
「それじゃあ、どうして亡くなったの。殺されたと言っていない以上老衰か事故だと思うのだけれど。事故にあってもたぶん平気だと思うから老衰なんでしょうけどこの世界とお父様の世界は同じ時間の流れ方をしていると聞いているのだけれど」
「その通りだ、だが問題はそこじゃないんだ。元からお前達の兄、アレンは普通の人間だ。それをちょっとした技を持って細胞を操り不老を再現しているだけなんだが、アレンは2度に渡りその細胞が急激に変化した事がある」
「2度って、父さんは何度もシンの姿を使っているじゃないか」
「オレとシンは一蓮托生の存在だからなあの姿も今の姿もどっちもオレであるんだ。それに対しアレンは無理矢理細胞を変化させられ魔王になり、元凶を討った事で元の人間の姿に変化した。その結果細胞に重大なダメージを受けてしまった。それが主原因だ」
「主原因ってことは他にも原因が?」
「……生きる事に疲れたそうだ」
「生きる事に疲れる?」
「ああ、言っただろう元は普通の人間だって。精神的に限界がきたんだろう。普通の人間にそこまで長い時間を生きる精神は備わっていない。そしてその精神を著しく消耗させる王を800年近く努めて来たんだ。もう、休ませて欲しいと告げてあの世に逝っちまったよ」
「ですが、父上は」
「オレは自分が普通の人間でない事を理解した上で生きてきた。最初は復讐に燃えて生き、その次に愛した彼女と子供達を見守り続ける為に生き、一回折れて50年程仙人みたいに生き、約束を糧に生き、今みたいに好きな事をしながらお前達を育てる様に生き、これからも生き続ける覚悟を決めてるからな。オレが自分から生きるのを辞める事はないさ。オレが生きる事を辞めさせられるにはオレを殺すしかないな」
無理矢理明るく見せようとするお父様がもの凄く痛々しかった。
「これであの世界との縁は完全に切れた。もうオレがあの世界に足を踏み入れる事はないだろう。他に聞きたい事はあるか」
沈黙しかないのを見てお父様が部屋に引き上げる。
「リーネ、悪いけど店の方
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