暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
十章 「魔術使い」
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い。別に何でもないわよ」
「俺には、そうは思えないんだけどな」
 すると、突然シャナの蹴りが飛んできた。
 急ブレーキをかけてそれを回避。 シャナの奴め、ちゃっかり俺の未来位置に狙いやがって。あのまま走っていたら当たってたじゃないか。
「危ないだろシャナ! 今の直撃コースだっただろ!」
 まぁ、当たらなかったから良しとしとくけどさ。
 ――それよりだ。
 ミニスカートで蹴りは良くないぞシャナ。主に俺の精神衛生的に。
 チラッとナニかが見えたような気がしたが、気にするな俺。
「何でもないって言ってるでしょ! これから一戦やらかすかもしれないんだから、余計な事は考えなくて良いの!」
 一戦やらかすかもしれない……か。
 つまり今朝、シャナが言おうとしていた計画とやらを実行するという事だろう。
「いよいよってことか。それじゃ、学校を出たら朝の話の続きを聞かせてくれー。何も知らないんじゃ、協力のしようもないからな」
 学校で聞こうとしたんだが、ちょうど良いタイミングがなかったからな。計画について俺は何も知らない。
 すると、シャナが不敵に笑う。
「分かったわ。私も今朝の事で聞きたい事があるから」
 その後は特に会話をする事もなく、俺たちはそそくさと校舎から走り出た。



  ◇



 学校から出た俺達は、御崎市西側に位置する御崎高校から反対側の東側、すなわち市街地に向かいながら歩いていた。
 東側市街地は、敵の潜伏していると思われる場所の在処がある可能性が、俺の見立てでも最も高い。
 なにせ、こっちに来た初日、この街の構造上、どう布陣するかはある程度、想定しやすいことは確認しているからな。
 なんの因果か、この御崎市の構造は、かつて俺が生まれ育った冬木市とよく似ている
 街を中央で二分する大型河川、真南川に対して未遠川。
 川で真っ二つに分けた東側は、御崎市の都市機能が集中した市街地であり、同様に冬木市では都市機能の発達した新都がある。
 極めつけに御崎市は西側に住宅街が広がるが、冬木市では同様に深山町がある。
 ここまで似通っていると、逆に不気味に思う位だ。
 この御崎市と冬木市とで共通している街の構造は、戦闘を行う際に非常に防戦に向いた作りになっている。
 何故ならば、移動の際には必ず橋を通る必要があるからだ。
 市を縦断している河川の配置上、仕方のないことなのだが、こいつが非常に厄介になる。
 橋ってのは必ず入り口と出口が各一ヶ所ずつしかない。つまり否応なく一本道だ。その上、遮蔽物のない開けた空間で、戦闘の際には絶対に正面からのぶつかり合いになる。
 となると、鍵になるのは物量だ。とどのつまり消耗戦、こいつは誰もが避けたい、最悪の内容だ。
 じゃあ、どうすれば良いか。
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