暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
十章 「魔術使い」
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あろう息を、全て吐き出すように吉田は言う。
 その声は『叫ぶ』とまでは言えないものだった。それでも、普段の吉田が滅多に出す様な声量ではないらしく、教室にいる生徒が驚いて彼女の方に振り向く。
「格好良かったです、とっても!」
 周囲の生徒の注目の中、吉田は続ける。
「私を助けてくれたり、先生にきちんと物を言ったり、凄く格好良かったです。本当です!」
 そう言ってくれるのは嬉しいけど、また倒れちまいそうで危なっかしいよ。
 それに、ここまで気迫のこもったお礼を言われた事なんてそうそう無い。なんとも返事に困るな。
「あ〜、その、ありがとう……で、良いのか? とりあえず落ち着けよ、吉田」
 俺がそう言うと吉田はまた黙りこんでしまった。

 …………………。
 ……………。
 ………どうすれば良かったんだ。

 再び教室は静まり返ってしまっとぜ、おい。
 俺か?
 俺が悪いのか!?

 だが、俺としても他に何て言えば良いか分からなかったんだ。
 許してくれよ。
 すると、今までこの空気をよそにメロンパンを食べていたシャナから不意に声がかかった。
 あいにく、救いの手ではなかったけどな。
「もう食べ終わった?」
「え? なんだって?」
 俺が聞き返すよりも先にシャナは席を立って言う。
「行くわよ」
 鞄とお菓子をたんまりと詰めまくっていた袋を手に取ったシャナは、思いっきり俺の手を引いてくる。
 何故か不機嫌な顔で。
「ほら、なにグズグズしてんの」
「ちょっと待てよシャナ。いきなり何だ?」
「うるさい、黙って来なさい」
「何処にだよ!?」
「いいから! 来なさい!」
「なんでさ!?」
 何を言っても無駄だなこりゃ。
 シャナに引っ張れながらも机から鞄を取る。
 仕方がない、午前中に使った教科書は置いていくしかないな。
「悪い、吉田。また今度、話を―――うわッ!?」
 一応、俺が鞄を取るのを待っていたらしいシャナは、俺が鞄を持ったのを確認すると引っ張る力を強めてきた。
 引っ張り過ぎだぜ、おい。腕がちぎれちまうよ!!
 吉田に詫びる間もなく、シャナに振り回されるようにしながら俺は教室を後にした。



  ◇



 教室を出た勢いのまま、俺達は廊下を何故か走っている。
 流石に手は放してくれたが、シャナに引っ張られているように行動している事は変わらない。
 逃げたら何をされるか、火を見るよりも明らかだしな。
「で、俺が何かしたか? なんか凄く不機嫌みたいだけどさ」
 ついつい、声に不満が混ざってしまう。
 当たり前だろう?
 会話こそ途切れてしまったが、皆で食事をしていたんだから。食事中に席を立つなんて、あまり行儀が良いとは言えないしな。
「うるさいうるさいうるさ
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