暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
九章 「都喰らい」
[9/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
実に『何か』思い当たる事があるようだ。
 だが、シャナが質問しても答えない以上、アラストールから口を開くまで俺たちは待つしかない。
 そうして歩き続け、またもや信号に差し掛かった時だ。ようやくアラストールは口を開いた。
「昔の話だ。西の果てに、自分の喰ったトーチに『ある仕掛け』をして、とてつもない世界の歪みを生んだ王がいた」
 いきなり何故、昔話を始めたのだろう。俺もシャナも面食らってしまっていた。
「真名を“棺の織手”といったその王は、我らフレイムヘイズを大々的に生み出す契機ともなった事件を引き起こした」
「―――どんな事件?」
 シャナはたっぷり一呼吸置いてから、アラストールに訊く。
「『都喰らい』」
 それは初めて聞く単語の筈なのに、凄まじく不吉な響きを感じさせる物だった。



  ◇



「………なんでさ」
 俺はただ愕然としていた。
 アラストールに聞いた単語だけが原因………、だったら深刻な状況に思える。
 だが、現実は精神衛生的には親切なようだ。
 何故なら、深刻であろう話はスーパーの、しかもお菓子売り場で繰り広げられているのだから。
「なぁ………、緊迫した内容の話だよな、これ?」
 気が抜けてしまいそうな俺の横で、買い物カゴを下げたシャナは、駄菓子を物色していた。
 家に戻るついでに夜食を買いに寄った……らしいのだが、そんなシャナを咎めることもなく、アラストールは相変わらずの深刻な口調で話を続けている。
 とりあえず、その空気の違いをどうにかしてくれよ。それとも、シャナとアラストールにとっては日常的な事なのか?
 存在を喰らう者を駆逐する者の会話、そんな世界の行く末のかかった話は、なんとお菓子売り場で繰り広げられているのだ。
 最近のお菓子売り場……、恐るべし。
「その“棺の織手”は己の喰ったトーチに『鍵の糸』という仕掛けを編み込んだ。彼奴の指示でトーチは形骸を失って分解し、元の存在の力に戻るという物だ」
「それをどうしたの?」
 シャナはアラストールに質問する。もっとも、陳列棚から袋菓子を取りながらだが。
 緊迫感が………、ないですよ。主にシャナの動作の性で。
 無論、本人対して口に出して文句は言わない。そんなことは口が裂けたって出来ない話だ。
 何故かって?
 だってさ、顔が真面目なんだよ………。真面目に駄菓子を物色してるんだよ………。シャナにとってはアレも使命と同格の作業なんだろうな。眼が違うよ、眼が。
 そんなところに文句を言ってみろ、結果は明らかだ。
 太刀で切り刻まれ、炎の余波に燃やされる俺の姿が容易に想像出来る。
 ミンチより酷いことは疑いようもない。
 俺だってまだ命は惜しいんだ。触らぬ神になんとやら……、だ。
「彼奴は潜んでいた都の人口の一割を喰
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ