”狩人”フリアグネ編
九章 「都喰らい」
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ど今回はそうもいかないらしい。
面倒なのは徒の性質だ。人を喰うだけなら、その手の輩とは馴染みだし戦いやすいんだが、封絶の性で範囲内の人間は動きを止めてしまう。実際に化け物を見た人間はとっさに動けなくなるもんだけど、最初のその時間さえ防ぎきれば、自然と逃げ出してくれるからな。
だけど、封絶内ではそうはいかない。人間は完全に動作を停止してしまっているから、戦域内からの排除には外部からの支援が必要になる。身動きを取らない木偶と化した人間が封絶内に多人数いれば、その全てを防衛するのは不可能だ。
そんな事態を未然に防ぐため、こちらで民間人のいない戦域を指定、ついでに言うなら先手を取れれば被害を最小限に擦ることが出来るのだが……。
「歯痒いな、敵が居ることは分かっているのに」
今の俺には、このまま黙って待っている事しか出来ない訳だ。
「仕方がないじゃない、それに焦っても始まらないわ」
無論、シャナだってこの状況をただ黙っている見ている訳ではないだろう。出会って、それ程経っている訳じゃないが、その位は俺にだって分かる。
「せめて、敵の目的が分かれば妨害工作とかが出来るのにな」
そう言ったが、シャナから返事はすぐに返ってこなかった。
〜Side シャナ〜
私はこの変なミステスの顔を見上げる。
フレイムヘイズとしてはまだ日は浅いが、私から見てもこのミステスの自己犠牲は明らかに異常だった。いや、多分それは自分以外の他人が見てもそう思うだろう。
既に人間でないことを教えれば、自分が存在を塗り潰したトーチのことを憂うし。残り時間が減る、ってわざわざ忠告してやったのに、平気で自分の存在の力を差し出してくるし。
何故、そこまで他人の為に生きるのか?
自分が消えるのが怖くないのか?
―――本当に変なミステスだ。
そんな私の視線に気付いたのか、あのミステスはこちらを見返してきた。
私は慌てて視線を逸らす。なんで私が、こんなコソコソとした真似をしてるんだろう。
今までトーチは何体も見てきたし、残り滓ってことも知ってるから、関わりを持つ必要性など考えたこともなかった。いや、そもそも他人に興味なんてなかった。
まぁ、前に存在借りたトーチの家族とその関係者の男子学生の件は、何故あんな気持ちになったのかは分からないが。
だが今の、私はこう考えていた。
―――もっと、このミステスを知りたい、と。
一体、何故そんな事を考えたのかは分からない。
こいつはミステスで、私はフレイムヘイズ。
それ以上でも、それ以下でもない関係の筈なのだが。
「―――行くわよ!」
もういい、今はただ歩こう。
歩いていれば、余計な事を考える事を考えずにすむ筈だ………。
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