解かれる結び目 9
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無い小さな村に着いた時だった。
村は、私達が辿り着く前日の夜に、複数の悪魔の手で焼き払われていて。
広範囲に渡って焼け焦げ、剥き出しになった地面には、元は生物だったと思われる黒い塊が点々と転がっていた。
悪魔達から逃げようとしたのだろう。
口を大きく開いて手を伸ばしたまま力尽きているものや、身を寄せ合って固まっているものもいた。
人間も動物も植物も、悪魔にとっては、ただの玩具か食料でしかない。
そういう知識はあっても、そこまで酷い惨状を目にするのは初めてで。
私は、込み上げる嫌悪感と驚愕と恐怖と吐き気に耐えられず。
しばらく身動きが取れなかった。
「アルフリード。こっちに来い」
一歩も近付けない私を、少し離れた場所の難を逃れた木にもたれかけ。
三人は、バラバラに転がっていた遺体達を集め、黙々と埋葬していた。
その中で一人だけ。
折り重なる二人に包まれ、辛うじて命を繋いでいる子供が見つかった。
けれど、わずかな隙間から覗くその顔は憔悴し切っていて。
固まって貼り付いた、子供の両親であろう二人を無理矢理引き離し。
なんとか引っ張り出した小さな体には、ほとんど意識がなかった。
髪先は焦げて縮れ。
衣服で護られていない皮膚の所々が青や紫に変色して異常に膨れ上がり。
手足にはおびただしい数の水疱を作って。
それでもまだ生きていた小さな命を、アルフリードは。
「頑張ったね。よく頑張った。もう、大丈夫だからね」
そう言って、しばらくの間笑顔で、額に額を重ねて……看取った。
いつもはふざけているウェルスも。
こういう時ばかりは、静かに唇を噛んで目蓋を伏せていた。
流れ落ちることはなくても、その目を濡らす哀切が確かにあったことを、私達は知ってる。
だから。
立ち上がったアルフリードの表情が。一言が。
信じられなかった。
「ちょっと所用してくる。これも始末しといて」
「…………っ!?」
私が直視できなかった子供の凄惨な姿を見て触れたアルフリードが。
たった今まで笑顔を注いでた相手を指して、これと呼び。
いつもと変わらない笑顔で、始末してと言った。
自分の目と耳を疑ったわ。
私が少し距離を置いた場所に座っていたから。
そのせいで聞き違えたか、見間違えたんじゃないかって。
でも。
「ああ。漏らすなよ。汚いから」
ウェルスが普通に答えて。
「失礼な奴だな。当然だろ」
アルフリードも、さらっと笑顔を返して。
彼はいつもと変わらない歩調で、無事だった木々の隙間に姿を潜らせた。
いつ
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