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IF物語 ベルセルク編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
外伝1 哀戦士
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失い無力な寡婦と子供を許す事など何程の事でも無い」

「……閣下、そのチップは何時作られたのです?」
ブラウラー大佐が恐る恐る問うとエーリッヒは一瞬だけ大佐を見て直ぐ視線を逸らした。
「……クロプシュトック侯の反逆が終った時です。何時かローエングラム侯と戦う事になると思った。貴族にどの程度期待出来るかと思いましたが期待外れも良いところでした。貴族連合など所詮は烏合の衆だと再確認しましたよ。あの阿呆共と組んで勝てる筈がないと……」

ブラウンシュバイク公は溜息を吐きリッテンハイム侯は首を横に振っている。戦う事だけではなく戦った後の事、敗けた後の事も考えていたとは……。俺は戦う事だけで精一杯だった。俺だけじゃない、皆そうだったろう。ブラウラー大佐も溜息を吐くばかりだ。

多分エーリッヒはそうやってブラウンシュバイク公の恩に報いると同時にローエングラム侯に自分の夢を託すつもりだったのだろう。エーリッヒが内乱を恐れず死を恐れなかったのはその所為だ。こいつにとっては全ての準備が終わっていた。むしろ内乱が起こるのを、その時が来るのを待ちかねていたのだろう。

「ヴァレンシュタイン、改めて言う。早く戻って来い、そして我らに力を貸せ。今回の内乱で貴族は弱体化し平民の力が強まった。それを無視する事は出来ん。卿が望んだように社会を変えなければならんのだ」
「ブラウンシュバイク公の言う通りだ。あのチップだけでそれを成すのは難しい。卿の力がいる」
反応が無い。エーリッヒの心には届かない。エーリッヒの心はローエングラム侯を追っている。

「エーリッヒ、俺からも頼む。戻って来てくれ、皆が卿を待っている」
「……」
「陛下が卿の事を心配している。それにリヒター、ブラッケが卿を待っている。卿と改革について話し合いたいそうだ」
「……そうか」
駄目だな、俺の声は未だ心に届いてはいない。

「ロイエンタール、ミッターマイヤー提督達、ローエングラム元帥府の軍人達も卿を待っている。卿を頼りにしているんだ」
「私を? 馬鹿な、私は彼らの希望を潰した人間だ、そんな事は有り得ない。私を憎んでいるだろう」
ようやく反応が出た。そうか、エーリッヒが落ち込んでいるのはローエングラム侯の事の他に彼らの事が有るからかもしれない。エーリッヒは彼らを高く評価していた、疎まれていると思っているのか……。

「彼らは卿を疎んじてなどいない。卿がローエングラム侯の名誉を守ってくれたと感謝しているよ」
「……」
「彼らは今困った立場に居る。彼らを助けてくれないか」
「助ける? 私が?」
表情が動いた、良い傾向だ。

「彼らはローエングラム侯の元で正規艦隊司令官を務めた。その所為でいささか弱い立場にある。メルカッツ閣下は彼らを高く評価しているがこのままでは軍内で不当な
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