第二百二十四話 帝との話その三
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「都の話は」
「そうじゃ、御主も聞いておるな」
「幾分かは」
「都はあやかしの話も多い」
「幽霊の話も」
「そうじゃ、何かとな」
「そういう話が多いですな」
羽柴も林と話しつつ言う。
「実に」
「書にもあるしのう」
そうした話がというのだ、ここでだった。
筆頭家老の平手がだ、一同に言った。
「今昔物語等色々あるが」
「そうした書に出て来る妖しい者達は」
「やはりいる」
「そうなのですな」
「都に」
「都の外にもな」
中だけでなく、というのだ。
「いるであろうな」
「外にもですか」
「では天下には」
「そうした者達がですか」
「大勢いますか」
「書を読むとな」
そこに書いてあるものを見ればというのだ。
「やはりな」
「いますか」
「死霊といってもよき者もいれば」
それでもというのだ。
「悪しき者がいてな」
「あやかしにもですな」
「いて、ですな」
「そして人に害を為している」
「そうなのですな」
「うむ、しかしそうした者達はまばらじゃ
平手が思うにはだ。
「大江山にもおったがな」
「酒呑童子ですな」
村井が言って来た。
「鬼共の首魁だった」
「そうじゃ、あの者達もな」
「確かに強かったですが」
「一介の賊に過ぎなかった」
「まつろわぬ者達はいましたが」
ここで言ったのは万見だった。
「しかし神武帝が近畿に上られて」
「その時に多くを服させてな」
「その数もまばらになり」
「もう残っておるにしても」
「僅かでありましょう」
これが万見の見立てだ、そしてこのことはここにいる全ての者が思っていることだった。最早そうした者達はというのだ。
「あまり」
「山に狒々がいて退治したとか」
「そうした話があったな」
前田にだ、後藤が応えた。
「岩見重太郎殿の」
「当家におられる」
この者も織田家入っている、それで話すのだ。
「土佐にもそうした猿の話があろうとも」
「とかくな」
「化けものはまばら」
「まつろわぬ者達がいたとしても」
それでもだとだ、前田と後藤も話してだ。
佐々もだ、前野に言った。
「まあ滅多にな」
「そうした者達もおらん様になった」
「この天下の裏にいそうな者達は」
「それこそ」
こう話すのだった、彼等も。とかくだった。
織田家の家臣達は誰もがだ、信長程察してはいなかった。だが信長は違っていてだ、朝廷に参内してだった。
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