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戦国異伝
第二百二十四話 帝との話その一

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                 第二百二十四話  帝との話
 林は信長と共に都に来てだ、共にいる織田家の主な家臣達に言った。
「都は収まった」
「はい、戦乱で荒れ果てていた都もです」
 明智が林のその言葉に応えた。
「かつての、いえそれ以上の」
「栄えを見せようとしているな」
「人が来て商いも盛んで」
「寺社も傷跡がなくなりな」
「朝廷も整っております」
「よくなった、しかしな」
「はい、天下は定まりましたが」
 それでもというのだった、明智は。
「それでも上様は」
「この度都に入られ朝廷に入られても」
「関白、太政大臣ひいては」
「幕府もな」
「はい、征夷大将軍にもです」
「そのお話がある」
「上様はどれを受けられるか」 
 明智は真剣に考える顔出述べた。
「それが大事です」
「おそらく関白とな」
「征夷大将軍ですな」
「これで上様は公家、武家のそれぞれ頂点に立たれることになる」
「足利義満公の様に」
「そうじゃ、しかし義満公は太政大臣であられた」
 関白ではなく、というのだ。
「関白の方が上じゃ、だからな」
「義満公より上の」
「まさに真の意味での天下人となられる」
 それが信長だというのである。
「まさにな」
「治める仕組みも整い既に動いています」 
 老中、若年寄を定め江戸城や大坂城の城代、それに寺社奉行や勘定奉行も定めた。それに長崎や奈良、横浜等に奉行も置いた。しかも石高もかなりのものだ。
 これだけのものが整った、その後はとだ。明智も言うのだ。
「上様が将軍、関白になられれば」
「万全じゃ」
「ですな、最早」
「天下は長きに渡って泰平になる」
 丹羽もここで言う。
「間違いなく」
「その通りじゃ、しかし」
「何か妙かと」
 蒲生が言った言葉はこうしたものだった。
「今の上様は」
「忠三郎、御主もそう思うな」
「ご自身から都に上がられましたが」
「こうした場合は朝廷から人が来られる」
 林は確かな声で言った。
「そしてな」
「上様が参上され」
「そしてじゃ」
 そのうえで、というのだ。
「将軍、関白にな」
「なられる筈が」
「それが、ですな」
「何故自ら参上されるのか」
「それがどうにも」
「我等にも」
「わからぬ、確かに上様は意表を衝かれる方」
 林もよくわかっていることだ、伊達に信長に彼が幼い頃から仕えている訳ではない。それで今もこう言うのだ、
「それはわかっておるが」
「今回のことは」
「どうにもですな」
「わからぬ」 
 明智と蒲生にも言うのだった。
「どうにもな」
「しかしじゃ」
 その林にだ、柴田が言って来た。
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