衝動の焔を鎮火せよ
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よりも一回りは大きな筈の彼女の左腕が、亀裂が走り一部砕け散り、所々右腕と同じ大きさになっている。
それは即ち、相手の力に打ちのめされ、欠けてしまっているのだ。
そこでラースはふと思い返す。
あの時確かにウージの体は欠けたが、だからといって “ピシリ” と音まで聞こえるのは正直おかしい。
至近距離にはおらず、少し離れていて相手の怪我も僅かとくれば、余計にだ。
つまりあの音は……グラトニーの体に罅が入った音だったのだ。
力を小出しにして行くだけならまだしも、ウージはパワーや体格ともに上。衝撃を逃がしきれなかった為に、ダメージを寧ろ左腕へ溜めてしまっていたのか。
(『色々有り得ルガ……連戦且つ慣れねぇ《風撃颯》に俺の力を掛け過ぎタカ……!? しかもアイツ、狙って攻撃してやがっタカ……!? けどやベエ……やべエヨ……!』)
常識的に考えて、ラースの力はもう左腕には使えない。かと言って右脚では決定力に欠けるし、負担が掛からないとも限らない。
優位から一転、逆転どころか最悪な窮地に立たされていた。
「う、ああ……うあああっ……! うぐぅっ……あぐぅっ……!」
痛みで碌に動けないグラトニーへ、更なる追撃が襲いかかる。
「Ahahahahah!!」
「こ、のっ……!」
それでも右手と左脚を支えにし、後ろ向きで右脚を振り上げ、炎腕の振り降ろしを迎え撃つ。
轟き渡る、ゴオン! という大音響。
されど……起こったモノが何であろうと、結果は再び宙を舞うのみ。
着地こそ普通に出来たが、戦力は大幅ダウンしている事態に変わりは無い。
ラースの助力は期待できない事は分かっているのか、グラトニーはダラリと下がった左腕をあえてかばわず、右腕だけでファイティングポーズを取った。
でも彼女は分かっている……右腕では受け止められても、三回が限度である……と。
「Ahahahahah!!!」
「負け……ないっ……!」
万事休すか……。
『左腕に力を込メナ! 振り上げろ相棒!!』
「!」
否、まだ道は途切れていない。
グラトニーの闘志は消えていない。
ラースが途切れさせない。
猛然と降りかかる二つの火柱を―――――
「やあっ!」
「……!!」
『網目模様な柿色の腕』が確かに受け止めた。
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