暁 〜小説投稿サイト〜
寄生捕喰者とツインテール
衝動の焔を鎮火せよ
[8/8]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
よりも一回りは大きな筈の彼女の左腕が、亀裂が走り一部砕け散り、所々右腕と同じ大きさになっている。
 それは即ち、相手の力に打ちのめされ、欠けてしまっているのだ。



 そこでラースはふと思い返す。

 あの時確かにウージの体は欠けたが、だからといって “ピシリ” と音まで聞こえるのは正直おかしい。
 至近距離にはおらず、少し離れていて相手の怪我も僅かとくれば、余計にだ。

 つまりあの音は……グラトニーの体に罅が入った音だったのだ。


 力を小出しにして行くだけならまだしも、ウージはパワーや体格ともに上。衝撃を逃がしきれなかった為に、ダメージを寧ろ左腕へ溜めてしまっていたのか。


(『色々有り得ルガ……連戦且つ慣れねぇ《風撃颯》に俺の力を掛け過ぎタカ……!? しかもアイツ、狙って攻撃してやがっタカ……!? けどやベエ……やべエヨ……!』)


 常識的に考えて、ラースの力はもう左腕には使えない。かと言って右脚では決定力に欠けるし、負担が掛からないとも限らない。

 優位から一転、逆転どころか最悪な窮地に立たされていた。


「う、ああ……うあああっ……! うぐぅっ……あぐぅっ……!」


 痛みで碌に動けないグラトニーへ、更なる追撃が襲いかかる。


「Ahahahahah!!」
「こ、のっ……!」


 それでも右手と左脚を支えにし、後ろ向きで右脚を振り上げ、炎腕の振り降ろしを迎え撃つ。
 轟き渡る、ゴオン! という大音響。

 されど……起こったモノが何であろうと、結果は再び宙を舞うのみ。

 着地こそ普通に出来たが、戦力は大幅ダウンしている事態に変わりは無い。

 ラースの助力は期待できない事は分かっているのか、グラトニーはダラリと下がった左腕をあえてかばわず、右腕だけでファイティングポーズを取った。


 でも彼女は分かっている……右腕では受け止められても、三回が限度である……と。


「Ahahahahah!!!」
「負け……ないっ……!」


 万事休すか……。




『左腕に力を込メナ! 振り上げろ相棒!!』
「!」


 否、まだ道は途切れていない。

 グラトニーの闘志は消えていない。

 ラースが途切れさせない。



 猛然と降りかかる二つの火柱を―――――



「やあっ!」
「……!!」


 『網目模様な柿色の腕』が確かに受け止めた。



[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ