第2話:隙間
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なんじゃそりゃ…」
それ以上は言わなかった。九重はあまり、失言はしない方だ。
「何よそれ。九重良、その言い方はどういうことかしら?」
「フカイイミハアリマセンヨ」
「突如棒読み!?」
「こらこら、仲良くするですよ!」
吹寄からの追求をかわしつつ、九重は少し溜息をつく。
「で、先生は一体俺たちを拘束して何か御用がおありで?」
「手のかかる息子が成長していくのを見るのは至福です。肴に酒が飲めるです」
「趣味悪いな、全く」
「九重は捻くれ者だから」
「うるせぇ」
吹寄からの追い打ちに九重はそっぽを向いた。こんなところにいてたまるかと、足元に置いてあったカバンをすくい取る。
「それじゃあ、俺はこれで。もう用はないですよね?」
「今日のところは!九重ちゃん、本当にありがとうございましたです!」
「…いえいえ。それじゃあ」
無愛想に挨拶をして、歩き始める。
だるかったと、ため息をついて忌々しい職員室の扉を開き、閉めた。
一人で出た、はずだった。
「…」
「どうしたのよ?」
「どうしたもこうしたもねぇよ」
吹寄の言葉に珍しいレスポンスの速さを見せる九重。
「なんでついてきてるのさ」
「私もこっちなの!ついてきてるのは九重の方でしょう!?」
「…あー、わかったよ、もう」
「なによ、その気だるそうな返しは!まるで私ががっついてるみたいじゃない!私はね、九重!あんたを…」
横で止まることなく喋り続ける吹寄を横に、九重は歩きながら思った。
ちょっと待てよ。
これ、どこまで続くんだ?
*
「意外とおいしいわね、このたい焼き。てっきり、少し薬のような味が強いのかしらと思っていたわ」
「………」
帰り道にあった公園のベンチに腰をかけ、吹寄がずっと喋り続ける中で、九重はなぜか黙々とたい焼きを食べていた。
(こうなるなら、素早く吹寄を撒けばよかった…)
どうせ校門までだろうと楽観していたのもつかの間、吹寄の寮と九重の寮は同じ敷地に立っていることに気づいた時にはすでに時遅し。
横から永遠と今日の授業の内容を語り尽くされ、頭を溶かされた九重には、もう吹寄に強く言うのすら面倒になっていた。
途中で見つけたたい焼きに吹寄の目が止まり、食べてみようと言われ、言われるがままに購入し公園のベンチに座っているのが今の現状だ。
(今日は厄日だな…)
ぼぉーっと、九重はたい焼きを見つめる。ただのたい焼きではなく、能力開発の向上を売りにした目新しいたい焼きだ。味は4種類ほどあるが、2人揃ってオーソドックスなあんこを食べていた。
いたって普通のたい焼きで、特に変わったところは感じられない。
しかし、九重はある付属価値に心のどこかがチクチクと痛かった。
「能力開発の向上…か」
能力開発のために作られたここ、学園都市。
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