暁 〜小説投稿サイト〜
とある少年の不屈精神
第2話:隙間
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ピピピッ、と軽い電子音が部屋の中を響き渡った。のそのそっと重たい体を無理やりに、腕だけじゃなく体ごと投げ出してのしかかるようにアラームを止めた。
「いてっ!」
勢い余って、ベッドから飛び出す。
近くの机に体の至る所をぶつけて、背中から受身も取れず床に落ちた。
極めつけに、止めたはずの時計が顔面にクリーンヒットする。
「あー、」
音でわかる。何段階も設定している中で、一番最後になる早い音だ。
つまり、学校が始まるまで一時間を切っている絶望的な状態。
そこまで理解して、じわじわと焦りがこみ上げてきているのにも関わらず動かない体に深くため息をついて、
九重の朝が始まった。
「最悪だ」
??

「最近調子悪そうやなー、良ちゃん」
「その呼び方どうにかならないのかよ」
青い髪にピアスを付けた、エセ関西弁を話す友人に九重は軽くため息をつく。
ホームルームが終わって帰宅の時間。それぞれが集団を作って今から遊びに行く予定の話や身支度をする中で、九重もまた、上条たちと同じように話をしていた。
「ほんとだにゃー。最近の良ちんにはフレッシュさが足りないぜ」
「なんだよそれ」
「一度きりしかない高校一年生のこの時期。もうすぐ夏休みだぜ?テンションあげていかないと波に乗れないにゃー!」
「せやで!高校初めての夏。甘酸っぱい夏!女性の肌の露出が増える夏!」
「最後の夏はどうなんだろうな」
そんな楽しそうな友達の話を横目に見ながら、無愛想な顔でそうですねそうですねと呟くだけの九重。
上条たちはもう既に、今からどこに遊びに行こうかの話で盛り上がっている。ゲーセンだの何だのと聞こえている単語にいちいちに九重は少しずつイライラを覚える。
そして最後に上条や土御門たちはニヤニヤしながら聞いてきたのだ。
「九重も来るか?」
確信犯め、そう九重は心の中で毒づいた。
彼の机だけ、まだ片付けられていない。
山のように積まれた紙が鎮座してあった。
「…いけねぇよ」

??

「はい、お疲れ様です。お二人ともありがとうございますです!」
ニコニコする小萌は、両手で吹寄からプリントをもらう。その隣で、脱力感とともに九重は深くため息をついた。
時間は授業終了から1時間が経っている。上条たちがすでに1時間遊びまくっているということを考えると、とても腹立たしく九重は思った。
「いえ、やるべきことをやっただけです!」
「どういたしまして…」
「九重ちゃん、不服そうですよ?」
小萌は満足そうに微笑む。それは、九重の苦しむのを見てではなく、教師として生徒を思った笑みだ。
「それにしても、九重ちゃんもちゃんと頑張っているようだし、先生は嬉しいですよ?」
「嫌味ですか?先生…」
「違います!それに友情を深めることも、生徒の仕事なのです」

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