2期/ヨハン編
K14 老研究者の挫折とこれまでの話
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ヨハンはマリアと隣り合わせで操縦席に座り、海上を飛ぶエアキャリアを操縦していた。
「そう。マリアも知らなかったんだね」
――“神獣鏡”による“フロンティア”の封印解除はできなかった。
いや、しなかった、と言うほうが正しいかもしれない。そう感じるほどナスターシャには動揺がなかった。
失敗を見越していた、あるいは、わざと失敗したとさえ。
「ええ……マムは一体何を考えてるの?」
ヨハンは答えられず、操縦桿を握る手に力を込めた。
“フロンティア”なくして武装組織フィーネの計画は成り立たない。月の落下から人を守るための前線基地を、彼らは手に入れられなかった。
計画は瓦解した。
この先、ナスターシャはどう動くつもりなのか。
ヨハンはどうすればいいのか。
“これからの大切な話をしましょう”
「マムだって考えなしに“フロンティア”起動失敗を見せつけたわけじゃない。ああ言ったからには、ちゃんと考えがあってのことだ。マムは先のヴィジョンを見据えてる。そう信じる。信じての最善を、僕は尽くそう。僕の大事な彼女たちを守るためにも」
具体的な答えは一つも言えなかったが、マリアはヨハンの答えで納得したようだった。
「大事なのね。調と切歌のこと」
「大切だよ。マリアがマムを大切に想うのとおんなじ」
「一番辛い時に親身になってくれた――」
F.I.S.でレセプターチルドレンは3〜5人単位のグループに分かれ、それぞれに担当研究者が付いていた。マリアのグループの担当はナスターシャだった。
あの「施設」でナスターシャは希少な「まともな」大人だった。ナスターシャはマリア、そしてマリアの妹セレナの身の上をいたく憐れみ、マリアたちに温かく接した。だからこそマリアはナスターシャを「お母さん」と呼ぶほど慕っているのだ。
「思えばおかしな付き合いよね。私たちも」
「あの白い孤児院からもう何年かな――他の子には悪いけど、僕は自分を保護したのがあそこでよかったと思ってる。調と切歌に会えて、結果的にセレナに会って、マリアとマムに会えた」
白い孤児院――ヨハンたち、“フィーネ”の器になりうる少年少女が集められた、養護施設を装った監獄。
全員があそこから始まった。
今でこそあまり動揺しないほうだと自負しているヨハンも、訳も分からないまま連れて行かれた白い孤児院の中で怯えていた。
それが顔に出たのか、はたまた彼女が聡かったのか。
ヨハンに声をかけた最初のレセプターチルドレンが、調だった。
さらには、調と先に顔見知りになっていた切歌が。
恐怖
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