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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
第百二二幕「すれちがい、宇宙」
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何に宇宙空間で革新的な技術であるかが理解できる。

「大気圏突破準備………BT連動、耐熱バリア展開!!」

 『クイーン・メアリ号』先端の白い突起の根元から、ビームのような耐熱バリアが展開されて船体を覆う。これもまた宇宙船に搭載された負担軽減機能だ。これには別の使い方もある、と技術者たちは苦笑いしていたが………まぁ、使う事はないだろう。

(もうすぐ……もうすぐ、地球の重力を越えられる!)

 不思議だ。高く昇れば昇るほど、自分の意識が広く、そして深く拡散していくような感覚がある。
 感覚が研ぎ澄まされ、はるか彼方になった地上から暖かな光が自分を押し上げているような感覚さえある。アドレナリンの過剰な分泌による高揚のせいなのか、それとも本当になにかスピリチュアルな物に目覚めつつあるのか。

 昔、誰かがこんな説を提唱したそうだ。
 人が宇宙に登れば、いずれ宇宙環境に適応する能力を身につけられる。
 とっくの昔に廃れた――そう、たしか『ニュータイプ理論』だったか。

(それも面白いかもしれない。きっとそうなれば、お母様やお父様との諍いも小さなことと思えるかもしれない――)

 大気圏の摩擦熱で視界が赤く染まる中、セシリアは自分でも驚くほどに安らかな心で、宇宙(そら)へ昇った。



 = =



 重力から解放された瞬間セシリアの視界に広がっていたのは、暗黒の空間にぼやけるように浮かぶ巨大な球体(スフィア)だった。大地の広がる球と書いて「地球」と読む、母の星。

 本当に地球を離れたのだ、と思った。まだ地球の引力を完全に抜け出してはいないが、既に周囲はクイーン・メアリ号と連動したブルー・ティアーズの生命保護が機能していなければ死んでしまう過酷な環境下にある。
 しかし、セシリアは不思議と「この環境でも人間は生きていける」と思った。
 こんな何もない、下に地球がなければ居場所も分からなくなるような空間で、それでも人類はいつかここで暮らせるのだと根拠もない確信を得た。
 だって、こんな小娘の自分が宇宙服なしに宇宙へ昇って来れたのだから、それは間違いない筈だ。

『こちら管制塔。クイーン・メアリ号、状況どうぞ』
『こちらクイーン・メアリ号。無事大気圏を突破し、安定軌道に入りました。システムに異常なし。間もなくPICによる一零停止を実行します』
『………とうとうここまで来たな。宇宙から見た地球はどうだ?本当なら360°カメラでも作りたかったって開発の連中がぼやいていたが、ハイパーセンサーなら見えるんだろう?』
『ええ、鮮明に見えますわ。あそこにわたくし達の大地があると思うと、地平線の向こうが見えない世界が本当に大きなものだと実感できますわね』

 ひょっとしたら、その感覚が『重力に縛られている』
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