3部分:第三章
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第三章
「突然空が曇り」
「雷が鳴り響き」
「何と」
お殿様もこれには驚きです。何しろ今さっき、教会に殴り込むその時まで空には雲一つなかったのですから。驚くのも当然です。
「まさか。では」
「そうです。雷が次々に落ち」
「しかも」
「しかも。どうしたのじゃ」
「屋敷の方に落ちました」
「屋敷というと」
お殿様は兵隊さん達の話を聞いてすぐに察しました。そのお屋敷が何処なのかを。
「わしの屋敷が」
「すぐに戻りましょう」
「若しかしたら雷で」
「う、うむ」
狼狽しながら兵隊さん達の言葉に頷きます。
「わかった。それではな」
「はい、それでは」
「今すぐに」
「神父よ」
去る時になって。忌々しげに神父様を見て言います。
「命拾いしたな」
しかしその言葉と共にまた雷が落ちます。何はともあれお殿様は雷が次から次に落ちる中を贅沢な八頭立ての馬車で急いでお屋敷に戻ります。するとお屋敷は。
見事な彫刻で飾られた門も奇麗なお庭もそのままでした。ですが立派なお城みたいなお屋敷だけは燃えて赤くなっていました。炎がお空に届きそうなばかりです。
「まさかとは思ったが」
「だ、旦那様」
「よくぞ戻られました」
馬車から降りて呆然とするお殿様。そこに家族や使用人達が急いでやって来ました。そのうえでお殿様に対して声をかけるのです。
「雷が続けて落ちてきて」
「それで」
「こうなってしまったのか」
「はい」
お殿様に対して答えます。
「その通りです」
「今御覧になられている通りです」
「馬鹿な」
まだ呆然となっていて呟きます。
「この様なことになるとは」
「ですが宝物は全部運び出せましたし」
「家の者も皆何とか」
「無事なのだな」
「はい、そうです」
口々にお殿様に答えます。
「皆何とか」
「助かりました」
「そうか。皆無事か」
「旦那様」
ここで一番古くお殿様に仕えている年老いた執事さんがお殿様に言ってきました。
「何じゃ」
「これは神様のお知らせではないでしょうか」
「お知らせだと」
「はい。思い当たるふしはありませんか」
「思い当たるふし」
こう言われると次から次にと沸いて出てきます。これまでの自分の行いが。思い出せば思い出す程恥ずかしくなってくる程です。それでもう恥ずかしくて死んでしまいたくなる程でした。
「・・・・・・ある」
「左様ですか」
俯いて答えるお殿様。執事さんはその言葉を受けて応えました。
「ではそれは」
「うむ。それは」
「以後は慎みましょう」
こうお殿様に言うのでした。
「そうしなければまた雷が落ちて今度は」
「もっと酷いことになるな」
「そうです。だからこそ」
穏やかに。お殿様に添うようにして言います。
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