解かれる結び目 7
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っとした笑顔だった。
緊張と警戒で固まっていたエルンストでさえ。
毒気と肩の力を抜き取られて、苦笑ってしまうくらいに。
翌朝。
「……? よろしく、お願いいたします。マリア様」
「……ええ」
お世話係の女性に髪を整えてもらった後、中央口から直接祭壇裏を通ってお役目に出向いた私を、階段下に立つ大神官様が驚いた表情で見上げた。
短い髪にも驚いたんだろうけど……父さんと母さんが亡くなってからは、鍵を掛けたまま一度も使わなかった扉だもの。どんな心境の変化だ? って眉をひそめるのは当然ね。すぐに元に戻ったのは、さすが年の功。
この好好爺然とした笑顔の裏で、勝手なことを考えていたのよね。
大人って卑怯だわ。
「神々の導きのままに」
昨日と同じ顔ぶれが、昨日と同じ場所に揃って一礼し、着席する。
エルンストが私の左肩のブローチを見て、ちょっとだけ目を丸くした。
うん。これだけは受け取ろうと思うの。
気持ちは拒んだのに、ずるいかな?
でも、この片翼型のブローチは私の為に作ってくれた物だと思うから。
私の目と同じ色の宝石が、すごく嬉しかったから。
他の誰にも渡さないで。
捨てたりなんかしないで。
私に、ちょうだい。
大切にするから。
「皆様も、心静かにお祈りください」
胸元で両手の指を組み、目蓋を閉じて高い天井を仰ぐ。
神々に問う。
私が為すべきことを。
神々と人間の世界を繋ぐ巫として。
神々の末席に座を与えられている女神として。
神々に求められていることを。
私はマリア。
神々に仕え、その意思を言葉として人間に伝え、広める者。
そして多分、新たなる役目を賜った者。
どんなに怖くても、そこから逃げない。
もう、目を逸らしたりしない。
だからどうか、声を。
神々よ、今こそ、その真意をお示しください。
「………………………」
…………そう。
やっぱりそうなのね。
頭の奥に響く、柔らかな声。
女性とも男性とも思える、穏やかな、昔から聞き慣れている声。
やっぱり、神々は私を神殿の外へ導いている。
私は選ばれた。
昨日指示を下さなかったのは、私に覚悟が無かったからだわ。
神々は、私の決断を待ってくれていた。
「神託は下されました」
組んでいた指を解き。
両の手のひらをぴたりと合わせて、その隙間に新しい世界を想像する。
白い、無垢な空間。
神々が行き着く場所。
静寂が満ちる、この世界とは異なる、独立した世界を。
そうして手のひらを離し、創造した空間をここではない場所で拡げる。
『無事
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