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SNOW ROSE
騎士の章
V
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が可笑しかったのか、少し笑いながら自らの名を名乗った。
「私の名はエフィーリア。自然の調和を保つ者、神の言葉を告げる者。」
 それを聞いたエルンストは顔を顰め、憤慨して言い返したのである。
「何という不届きな輩だ!女神の御名を語るとは何たる冒涜!」
 エフィーリアは、そんなエルンストを見てやれやれといった風に頬に手をやった。
 エルンストはそんな彼女の仕草を見て馬鹿にさるたと感じ、傍らに置いていた短剣を抜こうとした。だが、どうしたことかそれは岩の様に重く、抜くどころか持ち上げることも儘ならなかった。
「この地に剣は似合わないわ。」
 そう優雅に微笑んだエフィーリアを見て、エルンストはやっとこの女性が女神であるのだと理解した。
 その後、彼は片膝を折って礼を取り、先の無礼を詫びたのである。
「そんなことはよいのです。私は、あなたに告げなくてはならないことがあって来たのですから。」
 そう言うと、エフィーリアは沈鬱な表情を浮かべ、これから起こる事柄をエルンストに話したのであった。
 エルンストはそれらを聞いて顔を青くし、女神に問い掛けた。
「私は…どのようにすれば宜しいのでしょうか…?」
「あなたはマルスを守らねばなりません。そのために、あなたはここへいるのです。必ずや彼がこの国を救ってくれるでしょう。」
 全てを伝えた女神エフィーリアは、エルンストの手を取って祝福を与えると、そのまま消え去ってしまったのであった。
「大変な事になる…!」
 エルンストはそう呟くと、そのまま走って館内へと戻ったのである。

 天には星々が瞬き、その中に一際美しく月が輝いている。その光は大地を青白く映し出し、真昼の喧騒を冷ましているようであった。
 女神に会った後、ケルテス公らの前に駆けてきたエルンストは、そのまま女神の言葉を伝えた。マルスに関する一部を除いてではあるが、それはエルンスト自身に告げられたものであり、あらぬ不安を煽らぬために差し控えるためでもあった。
 当初は困惑していたケルテス公らも、聞くうちに彼の言葉を信用するようになり、それならばこの先の難局をいかに乗り切るかと思案していた。
 マルスは直ぐにでも立つべきと提案したのであるが、公はそれに反対した。
「気持ちは分かるが、ここは準備を整えて出立するがよかろう。」
 エルンストもこれには同感であった。今の旅支度ではあまりにも心許ない上、丸腰のまま敵地へ入る無謀は避けたいのである。

―何としても守らねばならん。この国の将来のために…。―

 今のエルンストには、女神と交わした言葉が深く胸に刻まれていた。

 その後、彼らがこの街を出発したのは十日あまり過ぎてからのことである。
 彼らのために公は馬車を用意し、これからの資金も工面してくれた。
「アルフレート王
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