騎士の章
V
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これを戒めるべし。王妃の権限はこれ、王にすら拒否すること罷に成ならぬ”とあるため、幽閉されるなどありえない話しなのである。
「書簡の内容じゃが、どうやらガウトリッツ王子が王に進言したらしいのじゃ。弟のアルフレート王子が母である王妃と結託し、王へ謀反を企てているとな。」
「ありえないっ!」
公から書簡の内容を聞くや、エルンストは立ち上がっり、その拍子に椅子が倒れた。
怒りに満ちた表情で立つエルンストに公は静かに言った。
「憤るのも無理ないことじゃの。しかしな、そう頭に血を上らせては、この先やっては行けぬぞ?仮にもおぬしは王家の血筋なのだから、もう少し冷静に対処せねばな。」
なんとはなしに公は言ったのであろうが、その言葉にマルスとクレンは驚いてしまった。
「エ、エルンストが王家の…!?」
マルスはエルンストに視線を移したが、彼は「失態だ。」と呟いて公に一礼すると、その場を後にしてしまったのであった。
残されたマルスは気まずそうに公を見ると、公は顎髭を撫でながらマルスに語りかけた。
「なに、直ぐに戻って来よるわい。頭を冷やしに行っただけじゃからのぅ。前と少しも変わらんやつじゃ。」
まるで叱られた子供のことでも話しているかのように言った。
そんな公に、マルスは一つ質問をしたのである。
「エルンストが王家の血筋とは…どういうことなのでしょうか?」
そう問われた公は目を丸くした。
「なんじゃ、聞いておらなんだか。あやつはプレトリスY世の末裔じゃ。かの王が妾に生ませた子が侯爵の地位とシュトッツェル地方を領地として頂き、その分家がヴィルヘルムの家系になる。今は伯爵の地位に着いているはずじゃが。この公爵家にも一度、ヴィルヘルム家から養子を迎え入れたこともある間柄じゃよ。」
マルスはその話しを聞き、廊下で見た肖像画を思い出した。
―これで納得がいったな。―
その外にも質問したいことは山のようにあったが、とやかく聞くのも無礼だと思い、その場は止めておくことにした。
目の前には静かにクレンが座っているが、こちらは公を見て苦笑いしながら、ワインを飲んでいるのであった。
さて、ここは館にある中庭である。秋の深まりつつある暮れの太陽は、落ち行く木の葉を赤々と照らし、名残惜しげに山影へその姿を消そうとしていた。
その一角に、先程食堂から出て行ったエルンストの姿がある。
―公の前であのような醜態を晒してしまうとは…!―
中心に据えられた噴水の縁に腰を掛け、自分を叱咤している様である。
そんな彼の前に、いずこからともなく一人の女性が姿を見せた。
長い金色の髪に、どことなく物憂げな栗色の瞳が印象的な女性であった。
エルンストはその女性に気付き、驚いて何者なのかと問い質した。その女性は彼の反応
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