騎士の章
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尋ねることにした。
「すまないが、この辺りで音楽を奏している場所がどこにあるか知ってるか。」
店番なのか、そこにいた青年は嫌な顔をしながら溜め息混じりに答えた。
「この音ね。少し行ったとこだよ。小さな野外劇場があるんだけどさ、毎日のように演奏に使われてるんだよ。」
この青年は音楽嫌いなのか、頬杖をつきながら話をしていた。まぁ、上客ではなさそうだと思ったのかもしれないが。
さて、エルンストは彼の話が少々気になり、このムスッとしている青年からもう少し話を聞くことにした。
「なぜそんなに音楽が盛んなんだ?」
「そりゃ、女神を讃えるためだ。知らないのか?」
青年は怪訝な顔をして、聞いてきたエルンストを見上げた。そして、まぁ仕方ないといった面持ちで話し始めたのであった。
「もう、いつの頃だか分からないって話しだけどさ。その昔、仲の良い兄弟がいた。弟は病気がちで、そんな弟を救おうと兄が働きに出るんだ。元来才能のあった兄は…」
「楽師に抜擢されるが、弟は曲を書き残して亡くなり、兄も馬車事故でなくなる…。雪薔薇の伝説だな。」
途中からエルンストに割り込まれた青年は「知ってるじゃんか…!」と、再び頬杖をついてムスッと外方を向いてしまった。
「すまんな。だが、なぜその伝説がこんなことに?」
「そりゃ、この街道がメルテまで続く本道になってるからさ。こっから歩いて四・五ヵ月で、兄弟が住んでたとされるメルテに行ける。そのメルテでは、三月から五月にかけて音楽祭をやるからな。帰ってきたやつらが入れ代わりでこの街に来て、また次のやつらが出発してるってことだ。」
青年はムスッとしながらも、エルンストにそう話したのであった。
エルンストはどうにかそれで理解出来た。
―レヴィン音楽祭か。―
しかし、こんな端から始まっていようとは、全く知らなかった。先に聞こえてきた音楽は、K.レヴィンのリュート・ソナタだったのだ。
エルンストは青年に礼を述べ、いつもより多く乾物を買った。
無論、このムスッとした青年への心付けも忘れはしなかった。
夕の帳が降りるころ、マルスとエルンストは宿に帰ってきた。
彼らは帰って早々、荷物の整理をし始めた。この街に長居する気はないのである。
「マルス、明日の昼前には出れそうだな。」
荷物整理をしながらエルンストが言った。
「そうだな。必要な物は揃ったし、他に用事もなさそうだしな。」
そう答えたマルスの荷物から何かが落ちた。あの花屋から貰った造花である。
それを見たエルンストは目を丸くして言った。
「何で君がそんなものを?」
元来、造花は女性の持ち物であり、まず男性は持つことはなかった。些か引かれている様子だったため、マルスは苦笑しつつ経緯を話したのであった。
「そう言うことか。
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