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SNOW ROSE
騎士の章
I
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達の話しをな。そいつらは、王子を護る為なら命を張れるやつらだと。まぁ、噂話程度にしか聞かなかったがな。エルの剣を見たとき、そんな話しを思い出したってわけだ。」
「お前だったのか!」
 マルスがのほほんと話しをしたかと思えば、それを聞いたエルンストが声を上げてマルスを驚かせた。
「何なんだ!?」
 訳が分からないマルスは、首を傾げてエルンストに問い掛けた。
 エルンストは興奮気味に「そうだったのか…!」と呟いていたが、やがてマルスの方へ向き直って言ったのであった。
「マルス、君のことを探していたんだ!この半年間、ずっと君のことを探していたんだっ!」
「俺のことを…?」
 興奮気味に話すエルンストとは対照的に、マルスは今一つ分からず困惑していた。この話しをしたからと言って、何で自分が探し人になるのか。
 そんなマルスを見たエルンストは、彼が理解出来るように説明したのであった。
「すまない、マルス。早く言えば、君が会った若き王子こそ、この国の第二王位継承者であらせられるアルフレート様だったのだ。私はアルフレート様の命により、君を探し続けていたんだ。」
 意気揚揚と語るエルンストだったが、マルスは未だ理解しかねていた。
「まぁ、探してるってのは分かったが、見つけてどうするんだ?」
「王都プレトリスにあるアルフレート様の館へお連れするようにとのご命令なのだ。」
 エルンストはマルスの問いに答え、満足気に微笑んでいた。だが、マルスは再び困惑の表情を浮かべて言った。
「そう言われてもなぁ…。俺は別に何もしてないんだが…。」
 マルスはそう言うと、どうしたものかという風に頭を掻いた。そして手にしたカップに口をつけ、甘いワインで渇きを癒したのであった。
「マルス、君がモルヴェリへいた頃、かの国の治安は酷いものだったと思う。そんな中、王の名代として帝都を訪問したのがアルフレート様であった。言ってみれば、体の良い身代わりだったのだがな…。」
 エルンストはそこで話しを区切り、ワインを一口飲んだ。そして、何かを思い出すかのように、夜空を統べる蒼き月を見つめた。
「行きは良かった。何事もなく帝都に辿り着き、宮殿に入ることが出来たからな。だが、帰りは違った…。失態と言われても反論は出来ないな。時の砂漠で盗賊団の襲撃に遇い、アルフレート様が攫われてしまったのだから…。」

 王暦五百三年六月のこと。
 初夏の風に連れられたかのように、若干十六歳の王子アルフレートは異国の大地を踏んだ。モルヴェリ帝国の帝王モルヴェリウス二世の即位二十周年式典への出席のためだった。
 元来、王が出席するのが習わしであったが、情勢が悪化していたため、第二王子を使者として立てたのである。
 しかし、気さくな帝王はアルフレートの来訪を喜んで手厚く持て成し、この機に友好
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