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SNOW ROSE
騎士の章
I
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でくれ!」
 ベルクは何とも思ってないのか、四つのグラスに並々と注いで各席に置いた。
 アンナはさも可笑しそうに笑い、未だ呆然としている二人に言った。
「別にそこまで高くないって。うちはツテがあるから、安く買えるのよ?」
「い、いくらだ…?」
 恐る恐るマルスが聞いてみる。
「えっとねぇ、金貨一枚の銀貨十五枚。」
「安かねぇよ!!」
 マルスとエルンストが同時に叫んだので、アンナとベルクは喫驚した。が、それから後は大爆笑であった。
「そんな…そんなに驚かんでも良かろうに…!そこまで儲けが無いわけじゃないぞ?そう心配すんな。」
「父さんの言うとおり!さ、早くしないと料理が冷めちゃうじゃない!エルンストさんも席に着いて。」
 マルスは今頃になって、この親子の恐ろしさを知った気がしたのであったという。

 その日の夜のこと。
 少し欠けた月が、海辺の街を照らしだしている。昼の熱さは残るものの、心地よい海からの風がエルンストを包んでいた。
 そんな風を楽しむ彼の背後から、不意に声を掛ける者がいた。
「なぁ、エル。今まで聞かなかったけどよ、エルは何で旅なんかしてるんだ?」
 その声に驚いたエルンストは、直ぐ様後ろを振り返った。
 そこには、二つのカップを持ったマルスが立っていた。
 それを見たエルンストは、なんだという風にため息を吐いて言った。
「びっくりするじゃないか…。」
 マルスは「悪い。」と言って片方のカップを苦笑いしながらエルンストに手渡した。その中には、どうやらドナが入っているようである。
「お前がなんかボケッとしてるから。何考えてたんだ?」
 マルスはそう問うと、エルンストの横に並んだ。
 そこは小さな庭ながらも美しく整えられており、紫や黄色などの花々が彩りを添えている。
 そんな庭を眺めながら、エルンストは受け取ったカップに口をつけて話し始めた。
「気付いているとは思うが、私は今も騎士として旅をしている。国の命ではないのだが、さる御方から重要な任を仰せ遣っているのだ。」
 エルンストはそう言うと、高き月を仰ぎ見た。まるでその人物を思い出すかのように。
「ローゼン・ナイツ。王子付きの騎士団だったな。」
 マルスが、月を見上げているエルンストにそう言うと、エルンストは目を見開いてマルスへと視線を移した。
「なぜその名を知っている!?それは王家と入団を許された者だけが知っているだけ。表向きは存在せぬことになっていると言うのに…。マルス、お前は一体…。」
 エルンストは目を細め、眉間に皺を寄せた。身を強ばらせ、マルスを警戒している様子である。
 だが一方のマルスはと言えば、何ともなげに酒を呑みながら話してきた。
「どっかの国の王子だかに偶然会って聞いたんだ。薔薇の意匠が入った剣を持つ、勇敢な騎士
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