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SNOW ROSE
騎士の章
I
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ねばならないからと、洗い終わった皿を指差した。そして、マルスに早く行ってこいと促したので、マルスは溜め息を零して出て行ったのであった。
「話し中悪いんだけどさ、ちょっといいか?」
 その場に行くと、マルスはそっと話し掛けた。二人は食事のことを、かなり深刻に悩んでいる様子である。
「マルス、立て込み中だから後にして。」
 顰めっ面のアンナに一瞬たじろいだマルスであったが、顔を引き攣らせつつも何とか話しを始めた。
「あのさ、さっきのこと中にまで聞こえてたんだよなぁ。そんでさ、親父さんと相談したんだけが…旅の方さへ良けりゃ、ここで一月働けないかなぁ…とね…。」
「父さん良いって言ったの!?」
 話しを聞くや、アンナは驚きの声をあげた。マルスはその声に驚いて、再びたじろいでしまった。
「いきなりデカい声出すな。どうしたってんだよ。」
 アンナは憤怒の形相でマルスを見つめ、そして爆発したのであった。
「どうしたもこうしたもないわよ!この前私が頼んだ時はダメだって言ったのに!なんでマルスなんかの頼みをすんなり聞くのよっ!お陰で考え込んじゃったじゃないの!」
 怒濤の如く言い放ったアンナは目の前の客を思い出し、「ホホホ…失礼致しました。」と言って、横にいたマルスの足を踏み付けた。
「イテッ!何すんだよっ!?それに“マルスなんか”ってどうよ?俺は親切にも…」
 皆まで言わせる前に、アンナはマルスの脛を蹴ったのであった。
「イッテェ〜!いい加減にしろっての!!」
 今までのやり取りを見ていた旅人は、我慢できずに吹き出してしまった。二人はバツが悪そうにし、取り敢えず持ってきた案を聞いてみたのであった。
「宿代は半分に食事付きか…。願ってもない。ここで働かさせてもらうよ。」
 旅人はそう返事をし、マルスに手を差し出した。対するマルスも「宜しくな。」と言って、その手を握り返したのであった。
 この旅人の名はエルンスト・ヴィルヘルムと言う。
 元は王国騎士団に配属されていたが訳あって職辞し、各地を回る旅をしているのだと言う。何やら曰くありげな人物ではあるが、それは後に解ってくるだろう。

 さて、それからこの宿に新しく入ったエルンストは、三人が驚くほどの働きを見せていた。
 早朝四時には起きて水汲みをし、それから一日分の薪を割ってから食事を摂る。その後に宿部屋の掃除をして布団を整え、昼には食堂で全ての洗い物を請け負った。
「参ったな。こりゃ、飯出す程度じゃ済まんなぁ…。」
 雇い主のベルクに溜め息を吐かせる程、エルンストの働きぶりは凄まじかったのであった。
 夕刻の涼風がそよぐ頃、昼の仕事が片付いて、やっと彼らの食事の時間である。
 エルンストが店の掃除をしている間、三人は食事の支度をしていた。
「やっぱ楽だな。エルが入ってから客
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