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SNOW ROSE
騎士の章
I
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に持ってきてくれ。金はいつもんとこあるからな!」
 二つのフライパンを器用に動かしながらベルクが告げると、マルスは「はいよっ!」と言って厨房を離れ、アンナと入れ替わるや裏戸から出て行った。
 店の中はそろそろ満席に近く、交替で入ったアンナは頬を叩いて気合いを入れていた。

 さて、マルスはと言うと、数十件先のヨッシュの店へ走っていた。
 空は初夏の心地よい快晴で、海から吹き付ける風が気持ちの良い日和りである。
「空が近いなぁ…。」
 マルスは少しだけ足を休め、真っ青な空を仰ぎ見た。
「時代は遠き昔か…。」
 そう一人呟くと、また目的地へと走り始めた。
 暫らくすると、野菜や果物の並ぶ店が姿を現わす。 マルスは店へ入ると、奥へいた人物に言った。
「ヨッシュ、またいつもの同じように頼むよ!あとはトマト十、ポテト三十、コーン十五も。それと、何か良さそうなものがあったら一緒に欲しいんだけど。」
 マルスが大声でそう言うと、ヨッシュと呼ばれた男は「はいよっ!」と威勢の良い返事をした。
「いつもありがとよ。えぇと、青物だったな。今日は良いヤツが入ってたからな。あと空豆なんかどうだ?つまみにゃ丁度いいんじゃねぇか?それからオレンジも質の良いヤツが入ってる。珍しいとこだとリチェッリからのダークチェリーだな。」
 この店の店主であるヨッシュは、もう馴染みになったマルスにあれこれと説明する。
 結局マルスは他に、空豆二十把に香草一束、オレンジとグレープフルーツ各十、それにダークチェリーを五十グルを追加した。
 いつもこのような感じである。
「台車貸すから、また夜にでも裏へ返しといてくれ。」
 ヨッシュはそう言うと、中にいた者に声を掛けて台車を用意するようにと告げた。それから木箱に品物を詰め始め、終わる頃には台車が用意されていたのであった。
「代価は銀貨一の銅貨十ってとこだな。」
 ヨッシュは素早く計算し、金額を弾き出した。しかし、それを聞いたマルスは目を点にした。
「おいおい、ちょっとばかり安くないか?少なくとも銀貨二枚はいくと思うが?」
「何言ってんだよ。ベルクの旦那にゃいつも世話んなってる。こんくらい勉強しねぇとな。」
 ヨッシュはそう言ってニッと笑った。
「ほれ、早く行きな。こんなとこで油売ってっとどやされっぞ。」
「それじゃまた。ありがとな!」
 ヨッシュに急かされたマルスはそう言うと、台車を引いて宿に戻って行ったのであった。

「ただ今戻り…」
 裏戸をを開けて言うや、言い切る前にベルクが怒鳴った。
「早くアンナと代わってくれ!これじゃ間に合わん!」
 驚いて店内を見ると、客が溢れていた。座れるところは全て塞がり、オーダー自体が間に合っていない様子であった。
「アンナ、オーダーに回ってくれ。今はどれくらい
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