8部分:第八章
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第八章
「牛さん達と同じように草を食べながらね」
「皆それぞれ別にお仕事があるんですね」
「そうだよ。それでクワちゃんのお仕事はね」
「僕のお仕事は?」
「まず女の子のアヒルさんに卵を産んでもらうようにすること」
それだというのです。
「これはここにいるどの生き物も男の子なら同じお仕事だけれどね」
「卵をですか」
「それと朝が来たら鶏さんと一緒に皆に教えてあげることだね」
それもだというのでした。
「それがね」
「それがなんですか」
クワちゃんはお馬さんの言葉を聞いてまずはその目を丸くさせました。そうしてそのまま驚く顔でお馬さんに対して言うのでした。
「それが僕のお仕事なんですか」
「わかったかな、それが」
お馬さんはその温かい顔でクワちゃんにまた言いました。
「クワちゃんのことが」
「少しだけ」
まだ全部はわかりませんでした。それでこう答えたのでした。
「少しだけわかりました」
「そう。少しだけなんだね」
「はい」
また答えました。
「そうです」
「そう。けれど全部わかる時が来るよ」
お馬さんはこうもクワちゃんに言うのでした。
「全部ね。それじゃあこれからは」
「これからは?」
「帰ろうか」
こうクワちゃんに告げました。
「クワちゃんのお池にね。帰ろうか」
「帰るって?」
「まさかずっとこの牧場にいるの?」
また温かい目での言葉でした。
「クワちゃんのお家に戻らなくていいの?」
「それは」
「そうだよね。戻らないといけないよね」
お馬さんが言うのはこのことでした。
「クワちゃんのお家にね。だからね」
「わかりました」
クワちゃんはまた素直にお馬さんの言葉に頷きました。
「それじゃあ今から帰ります」
「あっ、ちょっと待って」
柵から飛び降りようとするクワちゃんを呼び止めました。
「待ってよ。いいから」
「どうしたんですか?」
「送るよ。お池まで」
お馬さんはこうクワちゃんに言うのでした。
「お池までね。送るよ」
「僕のお家までですか」
「クワちゃんにとってはとても遠いけれど僕にとってはすぐそこだしね」
「お馬さんにとってはすぐそこなんですか」
「そうだよ。すぐそこだよ」
お馬さんはまた言いました。
「僕にとってはね。だから乗りなよ」
「お馬さんに乗るんですか」
クワちゃんはその言葉を聞いて目を丸くさせました。実はクワちゃんはお馬さんに乗ったことがなかったのです。ずっと自分の足で歩くか泳いできたのです。
「お馬さんの背中に」
「そうだよ。今は坊ちゃんも仕事でここにはいないし」
「あっ、本当だ」
クワちゃんはこのことにも気付きました。見れば若旦那さんは牛さんや豚さんの世話を犬の皆と一緒にしています。当分
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