第五話:予期しなかった幸運
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かと難儀して、ついつい内心テンパってしまう、かなりクセ者な存在である。
楓子が談義出来ないと思ったのも頷けよう。
だが一方で、いっこうに漫画やら一部アニメやらへ理解を示さない父や、先に言ったようにかなり馬の合わない長男とは違い、即答で失せろと言ったり時に手刀をかましてくるだの、此方もちょくちょく物騒な麟斗ではあるが……これまで一回たりとも、楓子の趣味を否定した事が無い。
『エレメント]V』のプチ☆コスプレパーティーこそ来なかったが、無言で分かり辛かったものの否定はしなかったし、置いて行った原作本を投げ捨てず、並びも変わっていたのでちゃんと読んでくれていた事もうかがえる。
表面上は冷たく、しかし内心はどこか温かい……長男とトコトン反発しあってきたのも相まって、楓子はそんな彼しか “兄” と思っていない。
オマケにかなりのブラコンであった。
……無論、周知の事実である。
「むぅ〜……理解してくれてるなら、もうちと踏み込んでも良いと思うのになぁ。水城がいれば第四巻の挿絵の真似できるのにぃ〜」
「抱き上げるシーンね。うん、確かに麟斗さん……筋力あるから行けるかも」
楓子の発言に舞子が返した。
実は麟斗の幼馴染である理子の妹でもある舞子は、麟斗の事を先輩名義や名字では無く名前で呼んでいる。
付き合いの長さとサブカルチャー方面で知識の広い彼女だからこそ、楓子の言いたい事を一発で理解し、次いで彼女も同感だと頷いている。
それでもクラスメイトの一人が言っていたように、無い物強請りをしても来ないのは事実であり、一先ず今日は暫く駄弁して解散だと、楓子は話終わると同時にグラス内のコーラを飲みほした。
そして店を出た―――――その時だった……。
「お? なーに君等可愛いじゃん」
「マジだ! マジだよ!」
「へぇ……これコスプレって奴か?」
「えっ?」
「な、何?」
突然ガラの悪そうな三人組が現れ、入口から少し離れた場所に立つ楓子達の傍まで、大股でズカズカと近寄って来たのだ。自分達より背も高く人相の悪い連中な為、怯えて声が出ず顔が引きつっている娘までもいる。
何より舐めまわすような視線は、これから良い出来事など起こらない事を悟らせた。
男達は彼女等の怯えをどう取ったのか、更に近寄り話しかけて来る。
「今出てきたとこ? なら暇でしょ? もう一回別の場所まで行っちゃわない?」
「け、結構ですから……」
「心配すんなよ、俺らだって鬼じゃねぇ、奢ってあげるってば」
「あの……えっと、おなかいっぱいですし、もう此処で解散……」
「つれねー事言うなよ、な? 行こ
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