第五話:予期しなかった幸運
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
由の一つに、母親似と言われる楓子や一番上の兄と違い、麟斗はどうも一部一部で父親に似てしまった為に、髪の色や独特な空気もあり、生まれついての眼付きの悪さが際立っている事も理由に挙げられた。
それに麟斗は険しい表情を崩す事はあれど、楽しそうに笑った事はそれこそ “全く” 無く、苦笑や自嘲で口もとを僅かに歪める事はあったが、どの場面でも総じて喜怒哀楽の “喜” と “楽” を抜いた顔しかしなかった。
そこから転じて、態度の悪い生徒だ、と取る教師が出たのだろう。
……尤も、彼が反論してきた時はそれなりにビクつき、幾ら兄が優秀だからと言ってそこばかりもい出すのはよく無いと、また教師という立場と権利を笠に着る態度はいい加減にして欲しいと、別の教師人の反論もありその悪口を言っていた一派は(と言うのは聊かおかしいが)今はそれなりに大人しい。
纏めてしまうと―――勉学もそれなりでスポーツも出来て、普通の男子とは雰囲気が違って、尚且つ見た目も良いとくれば、モテない訳が無いのである。
肝心の麟斗自身が自覚していない節があるのが、一番残念な所だが。
一頻り麟斗の話題を語り終えると、一人の剣士風な衣装を着た女の子がグラスを傾け、柔らかく笑った。
「兎に角さ、来なかったのならしょうがないし……それに今日はプチ☆パーティーでしょ? 楽しもうよ」
「うん! もちろん!」
再びラノベやアニメ、漫画にゲーム関連の話題へシフトし始め、今自分が『エレメント]V』以外にハマっている物は何だの、あのラノベは外れだったけれども別のは思った以上に面白かっただの、このキャラの能力はこんな風にも使えそうだの、今後はこんな風に物語が進展していきそうだの。
―――個人的な賛否や考察から、本当に単なるたわいもない話を、彼女等は嬉しそうに話し続けて行く。
(はぁ……ここに兄ちゃんが来てくれたらもっと面白いのになぁ…… “あの人” よりもっと、ラノベ談義は無理そうだけど)
楓子が今し方思った “あの人” とは実は『一番上の兄』の事であり、楓子は以前よりラノベは低俗だの、そんなくだらないモノを呼んで何が楽しいのかだの、ジャンル違いなだけで彼とて同じくらいなオタク気質にもかかわらず、散々詰られてきた事もあり良い感情など抱いていよう筈もなかった。
表では品行方正と猫を被り裏では妄想癖こみで大仰な長男、実は小学校辺りから既に中二病気味になり常にハイテンションな楓子……彼女等はそれなりによく喋る、もとい喧しい性格だった。
だが、麟斗はと言うと兄弟の中では静かな方で―――――と言うか比べるのも可笑しいぐらいに余り喋らない質であり、両親すらどの様にコミュニケーションを取っていい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ